工務店の新しい集客装置となるか、期待されているのが SHO-SAN(東京都杉並区)の展開する「OM-S(オーエムエス)」だ。OM-S最大のメリットは2つ。オンラインセミナーを入口にして、顧客がリアルに来店するアポイントまで自動的に獲得できること。そして初期検討者を獲得しやすいことだ。工務店側にとっては集客業務に対して負荷を軽減でき、効果も期待できる集客方法スキームだ。
さらに現在では、エリアによって膠着してしまった広告と集客状況をガラリと変える「次の一手」になる手法だ。これはコロナ禍によって生じた生活者の変化も背景にありそうだ。実際に導入している工務店に話を伺った。
時代にフィットした「情報の伝え方」で顧客を獲得
工務店の集客システム「OM-S」は、新規客をオンラインセミナーからリアル来店に誘導する集客方法スキーム。ポイントは、同社が製作するオンラインセミナー動画のクオリティと、セミナー後にアンケート回答を促す一連のノウハウだ。アンケートと同時に、顧客自らがリアルな相談日を選択する仕組みで、これまでセミナー参加者の約2割の次アポ獲得が実現できているという。工務店側が行う工程はオンラインセミナーの日時設定をするのみ。目指すのは総合展示場のような自動的な集客チャンネル。それを工務店規模でも実現することで、生活者が作り手を平等に選択できることを目標としているという。
ジョイフルホーム(札幌市)は、今年の6月に「OM-S」を導入。現在まで約5か月間活用し、平均して1回のオンラインセミナーで10組~25組の新規客が集客できている。「正直、この札幌でオンラインセミナーの需要があるとはまったく信じていませんでしたね」とマーケティングを統括する同社の本間英紀さんは振り返る。
SNS集客が順調だったが…
ジョイフルホームは旭川の老舗工務店を母体として発足。北海道という高い性能を求められるエリアで、コストパフォーマンスが高い住宅を提供することで受注を伸ばしてきた。近年札幌の土地価格が上昇する中で、より高い付加価値を求めデザイン性にも注力。これまでにないラインの規格住宅を展開するなど、チャレンジを続けている。
集客やPR面でも、常に前進を続けてきた同社。大手情報サイトの活用を土台に、SNS広告の展開にもいち早く取り組んできた。フェイスブック、インスタグラムの2つを軸に、それぞれマーケティング部の担当者が広告費のかけ方のバランスを見ながら投入。成果を出してきたが、コロナ禍に入る昨年4月頃から変化が起こる。「ちょうどコロナ禍に入る頃です。急激にSNS集客の反響がなくなってしまったんです」(本間さん)
SNS広告だらけの工務店の現状
本間さんは原因について「理由は明白で、大小関係なくほとんどの工務店がSNS集客に本腰を入れ始めたから。インスタグラムを見れば分かりますが、すでに住宅会社だらけです。費用対効果が急激に悪化してしまいました」と話す。
同社のSNSも、ある程度見られてはいるものの反響数が急激に減少。会社的にもようやくSNS集客が市民権を得て、スタッフも活用方法を覚えた頃だったために、落胆は大きかった。
「その時に痛感したのは、工務店は常に集客の『次の一手』を考えておかないといけないということ。しかも普通のスピードでは駄目。我々がSNS広告に早めに取り組めたのはその意識があったからですが、それでも変化に追いつけない部分がありました」
オンラインセミナーを導入
そんな時に出会ったのがOM-Sによるオンラインセミナー集客だった。「そんなケースは都会の話で、地方では難しいだろう」と本間さんも半信半疑だったが、結果的には初回から予想以上の集客があり、いきなり10組以上の新規客が集客できた。
実は同社はリアルでもセミナーを開催したことがないという。やりたいと思いつつも、ほとんど人が集まらないという他社の話も耳に入っていたからだ。「だから余計に驚きでした。リアルと違い手間なくできて、それにオンラインなら(札幌の)冬場でも問題なく開催できます」
驚いたのは集客数と同時に、90分のセミナー動画の離脱率の低さ。参加者は30代・40代前半を中心に、50代まで幅広い客層だ。
動画のクオリティと効率的な広告運用
本間さんがまず挙げるのが、システムによる手間が工務店側にほとんどないことはもちろん、セミナー動画のクオリティの高さだ。離脱率の低さに表れているその部分は「講師の上手さ、構成の上手さなど、絶対に真似できないと思います」と強調する。
同様に本間さんがポイントに挙げるのは、オンラインセミナーへ誘導するためのOM-S側の広告運用。反響が良くなるように広告のバナーデザインを頻繁に入れ替えるなど「足元の工夫をしっかりやってくれることに好感を持っている」という。
また、OM-Sの担当者による対応の細かさも気に入っている。「例えば、自分たちでは絶対に使わないようなアングルの写真が選ばれていて、それが一番反響が良かったりもします。そういう人間でないとできない部分というか、数字を見て適宜最適な対応するのは僕らだけでは難しいので、有難いですね」。結果として、顧客獲得単価1~2万円を維持しているという。
初期検討者を集められる
セミナーは2回目以降も順調で、多いときは25組の集客ができた。現在まで集客数は上下するものの落ち込みは見られないという。参加者について「これまで弊社で取り組んできた広告ではいなかった、初期検討者のさらに初期のような人も参加してくれている実感がある」と本間さん。また、「熱心な参加者が多い」とも。実際にリアルで会えている顧客と話をしても「失敗したくない」という熱量の高さを感じるという。同社の営業スタッフからは、普通の申し込み客より質問が多く、会話が弾むという声が出ているそうだ。
コロナ禍で変化した顧客ニーズに対応
本間さんは、コロナ禍によって生活者の情報を受け取る体勢が変わってきたと感じている。「情報がオンラインを通じてまさに溢れている。この中で、家づくりなど何か目的をもって情報を探すのは、プロでない方には真偽を見分けるのが本当に難しい。そうした状況変化の中で、こちら側もただ情報を発信するだけでは不親切になってしまった。それで本質的に伝わらなくなったのではないか」と分析。
「だからこそ『オンラインセミナー』という伝え方がマッチしていて、ある程度情報量があった方が好まれる(動画は90 分が基本)。弊社でも10組に1~2組はリアルな相談につながっている。そこからは営業担当者を中心に、正しい情報を発信している社員や、会社のことを伝える努力を今まで同様すべきなのではないか」と話す。
現在、同社はOM-Sで土地探しセミナーの動画を準備している。ニーズの高い札幌では、土地情報へのアクセスが多い。そこで現在の家づくりセミナーに加えて「土地探しのオンラインセミナーからのリアル来場」を新たな集客導線にしたい考えだ。
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