CLT造が少しずつ増えてきており、小~中規模建物での可能性も検討されている。これらの建物の熱性能について、北海道立総合研究機構の林産試験場に建つ「北海道CLTパビリオン」(以下、パビリオン)の調査研究をもとに北海道大学の森太郎准教授に話を聞いた。
〈※掲載情報は取材時のものです〉
森さんの調査によると、パビリオンのCLTは壁厚210mmで0.11W/mK。欧州のCLTと同等の値で高性能グラスウールの1/3だ。ただしCLTは濡れると熱伝導率は増す。外部あらわしで用いると降雨などで変動する可能性がある。
パビリオンでは壁・屋根パネル間は気密パッキン、壁・床パネル間は外周部防水シート立ち上げ、床・床パネル間は相欠き+構造用ビスで気密化した。C値は0.34cm2 /m2。CLT造はほかの木造工法に比べて構造がシンプルなので床・屋根パネル間を相欠きにして引き寄せ効果の高い半ネジの構造用ビスで壁と接合したことも効いた。
接合金物の熱橋対策が重要
今後の課題は結露対策だ。木材は高含水率の状態が維持されると腐朽し、材料の強度が低下する。さまざまな箇所の腐朽対策に気を配る必要がある。
ポイントは接合金物の熱橋だ。森さんはパビリオンをサーモカメラで実測。その結果をもとに札幌の厳寒期の気象条件でシミュレーションを実施した。その結果、屋根・壁・床のパネルで一体化する通しボルトや引きボルトの座金が熱橋になっていた。座金周辺には断熱材を填充していたが、このことで熱流が座金に集中して温度低下を招いたようだ。また鉄骨梁から大きな熱流が生じており、床断熱GW200mmをしていても結露の可能性が示唆された。
同じ条件で室内の表面結露の可能性を検討した。A部床・壁を無断熱としてシミュレーションすると露点温度以下の面積率は0.24%。床断熱GW150mm、壁外断熱GW25mmにすると・・・・
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2020年10月号 健康・エコな家づくり』(2020年9月30日発行)P.60~に掲載しています。
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