パナソニックホームズ(大阪府豊中市)はこのほど、慶應義塾大学の伊香賀俊治教授らと共同で、住宅用全館空調システムの「温熱環境」や、HEPAフィルターを有する換気システムの「空気環境」が健康に与える影響について検証を行い、その結果を発表した。
全館空調システムの温熱環境が冬季血圧に与える効果についての検証では、全館空調群は個別空調群に比べ、起床時最高血圧が4.1mmHg低く、入浴前の血圧上昇値も2.1mmHg低いことが確認できた。厚生労働省が提唱している“健康日本21(第二次)”では平均血圧4mmHg低減が目標とされており、空調方式を含めた室内温熱環境の改善は循環器疾患予防に有効な方策として期待できることが明らかになったとする。また、夏季の睡眠の質に関する検証では、寝室の就床時平均温度および平均相対湿度は全館空調群が有意に低く維持されており、アンケート調査においても暑さにより睡眠が困難となった割合が低い結果が得られた。個人属性・生活習慣など、温熱環境要素以外の睡眠の質に関連する要因を考慮した上で、全館空調群の効果を分析検証した結果、個別空調群に対して入眠潜時は0.60倍に短縮、睡眠効率は1.09倍高いことが示され、睡眠の質を向上させることが期待できる結果が得られた。
HEPAフィルターを有する換気システムの空気環境が肺機能に与える効果の検証では、PM2.5の影響を受けやすいとされる努力性肺活量(最大限息を吸った後にできる限り一気に吐き出した空気の量)、1秒量(努力性肺活量の最初の1秒間で吐き出した空気の量)、肺年齢の低下量が予測に比べて抑えられている傾向が見られた。これらの結果から、HEPAフィルターのある換気システムを備えた住宅は、居住者の肺機能などの健康状態に良い影響を与える可能性が示唆されたとする。
温熱環境が冬季血圧・夏季睡眠に与える効果についての検証は、2020年4月に開始。住宅の省エネルギー基準に定められる地域区分5・6地域において、ZEH水準の建物性能を有する住宅居住者を対象に実施した。空気環境が肺機能に与える効果の検証は、2015年11月に開始。PM2.5除去装置(HEPA フィルター)を換気の給気部分に備えた住宅の居住者を対象に実施した。
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