天野保建築(山梨県富士吉田市)は木材を生かした超高性能住宅に一貫して取り組んでいる。最近は西方設計(秋田県能代市)との協働で、技術的にも意匠的にも洗練の度合いを高めている。同社の外壁板張りと木製サッシの活用手法について紹介する。
〈※掲載情報は取材時のものです〉
ファサードラタンは比較的安価
外壁板張りの弱点の一つが、日当たりのよい面などで乾燥収縮して実が外れること。片側の実だけで留まっている状態となるので、不安定で防水性も損なわれやすい。このほか釘周りから割れる事例も散見する。これらをふまえて天野洋平さんが採用していのが、スギ板などをすのこ張りにするファサードラタンだ。雨水が躯体内に入ることを前提とした工法で、一般的な外壁板張りとは考え方がまったく異なる。
すのこ張りの目的の一つは冬季の透湿性を高めること。付加断熱工法を採用した超高断熱住宅は内部結露のリスクが高まる。外壁通気層の働きを高めることで内部結露に対して安全側になる。もう一つは夏場の外壁通気層の通気量を増やし、壁面に照り付ける太陽熱の影響を緩和することだ。
天野さんはこれまでファサードラタンを2棟で採用した。1棟目が幅7mm・厚さ21mmのスギ板、2棟目は幅90mm・厚さ18mmのスギ板を用いた。2棟は貫板の寸法に合わせて製材しやすくした。1、2棟目のいずれも耐久性に配慮して一般的な外壁板張りよりも板厚を厚めにしている。天野さんはファサードラタンのスギ材を心材(芯材)だけでそろえ、粗挽きで用いている。購入先は秋田の製材所だ。運賃を入れても地元の製材所に依頼するよりも安いという。秋田の製材所は「心材だけ」といった注文に慣れており、死節のある欠点材もハネてくれる。
延べ床面積45坪の住宅におけるファサードラタンの材料費は25万円程度。横張りの場合、大工が1人で張れるのも利点だ。後述する縦張りだと50万円程度で張り手間もファサードラタンより掛かる。
ファサードラタンの施工のポイント
ファサードラタンの目透かしの幅は10mm。これは透湿防水シートのメーカーの規定だ。ファサードラタンは雨水とともに紫外線の影響も受けやすくなるため、耐候性の高い専用の透湿防水シートを用いる。この材料はドイツからの輸入品だ。天野さんはウルト社の「ウートップサーモファサード」を採用している。価格は一般的なタイベックシートの・・・・
【残り1535文字、写真12枚、図面3点】
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2020年10月号 健康・エコな家づくり』(2020年9月30日発行)P.56~59に掲載しています。
こちらの記事も読まれています
・【天野保建築】大型パネルの利点生かし、さらなる高性能化へ
・高性能木製サッシのサプライチェーン整う -レインボーオーシャンビュー
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。