空き家は社会問題と認知されつつも有効な解決策が見いだせていない。一方でまちづくりに関連した空き家利用の需要が高まっている。空き家活用には物件の掘り起こしに始まり契約、改修工事などさまざまな作業が必要になる。それらを一手に引き受けるコミュニティ大工という新しい業態について、鹿児島県頴娃町を拠点に活動する加藤潤氏に取材した。
要点①コミュニティ大工の業務内容
空き家活用に関する全般の業務に対応。売り上げの中心は改修工事
①空き家活用を支える新しい業種
◉まちづくりの一環で空き家活用が活発化。だが空き家は不動産流通に乗らないため売買や賃貸が難しい
◉空き家活用の建て主は若い移住者が中心。改修費用は100万〜300万円程度と低額
◉空き家の斡旋と低額での改修工事の引き受け先がない。その隙間を埋めるのがコミュニティ大工
②売り上げは改修工事で立てる
◉空き家利用に際して物件発掘から契約書作成、サブリース提案まで対応。ただしこの部分は無償。売上は改修工事で立てる
◉一般的なやり方では予算不足。図面や見積り作成を省いて加藤氏が現場で判断。加藤氏が多くの工事を担い、工種を減らす。無償の労働力である建て主DIYやワークショップも多用
③改修工事のコストを削減する手法
◉②に加えて工事範囲を最小化。工事を1回で完了させずに住みながら手を入れる。店舗や宿は事業内容も手探り状態なのでこの進め方と相性がよい
◉工期に融通を効かせてもらい手が空いた時期に現場に入り手間賃を抑える
◉工種を減らすために加藤氏が設備や板金などを除く多数の工事を担う
④利益は手間賃とコーディネート費用
◉建て主はDIYにフル参加。友人、加藤氏の知人によるワークショップも複数回実施
◉材料入手も工夫。近隣から製材を譲ってもらうほか製材所から直接材料を購入
◉加藤氏の収入は手間賃1.5万円/日とワークショップコーディネート費用0.5万円/日
要点②コミュニティ大工の空き家活用サポート
空き家活用のための物件探しからサブリース、賃貸契約までサポート
①空き家を借りるために必要なこと
◉空き家の借り手は30・40代の女性の移住者が多く、住居のほか店や宿に改修することも少なくない
◉加藤氏の地元の仕事の場合、貸してくれる物件探し、借りてよい物件かどうかのインスペクション、契約書の雛形作成、近隣との協議などをサポート
➡店舗や宿に改修する場合は事業計画の作成を手助けすることもある
◉空き家の賃貸契約は親族が集まる盆と正月が狙い目。A4判2枚程度の簡単な書式の普通借家契約を結ぶ・・・・・
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン12月号/工務店の経営を支える設計力』(2021年11月30日発行)P.90~に掲載しています。
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