群栄美装(群馬県前橋市)は、実質的に経営のかじを取る専務の井野優一さん(35歳)が、自身の設計力を高めることと比例して、経営的な成長も実現している工務店だ。井野さんが、“右腕”として信頼を寄せる茂木大地さん(30歳)と共に、性能とデザインに優れる1棟(30~35坪程度)あたり3500万~4500万円の住宅の新築を年間7~8棟コンスタントに手掛け、およそ1年半先までは予定(着工枠)が埋まる人気ぶり。井野さんが1人で住宅事業をゼロから立ち上げ、8年間で今の状況にまでたどり着いた道筋を、設計力を起点とする小規模工務店の成長(経営力向上)モデルとして見る。
「住宅やりたい」決意固めゼネコンから転身
ゼネコンで現場監督をしていた井野さんが、父(社長)がゼネコンの下請工事をメインに手掛けていた群栄美装に入ったのは27歳の時。自ら直接、デザインや施工に携わることができ、“ 建築の仕事の魅力 ” をダイレクトに感じられる「住宅をやりたい」という強い決意を抱いていた。そのため最初から理想は高く、健康や快適さを確保する温熱環境など性能面にこだわりながら、例えば庭・外構の一体的なデザインや採用したい素材・設備などで、施主が予算的に厳しくても、つくり手としてどうしても譲れない部分については、「自社で負担してでもやり続けてきた」(井野さん)。その根底にあるのは「建築が好き」という想いと、「顧客のために、自分自身も納得のいくものを提供したい」という信念。それが同社の成長の “原動力 ”になっている。
ブランディングにも注力
数年前には、建築家・伊礼智さんが学長を務める「住宅デザイン学校」で学び、さらに最近は “ 先輩工務店経営者 ” として慕うCOMODO建築工房(栃木県宇都宮市)代表の飯田亮さんが展開する「COMODO ★ LABO(コモド・ラボ)」に依頼し、ブランディングなどの支援を受けることなどにより、井野さんは「地域工務店として1つ先のフェーズに進むことができたのではないか」と手応えを感じている。
飯田さんには、設計・デザインに関することのほか、職人との関係性など、あらゆる点について相談。ブランディングについては、群栄美装が手掛ける「群栄のいえ」の世界観と企業イメージを一致させるため、名刺1枚のデザインから井野さんの所作や服装に至るまで、飯田さんから細かなアドバイスがある。また、事例(住宅)写真などの撮影も飯田さんに依頼しており、「施工も分かる設計者の視点による建築の魅力を最大限に引き出す写真」がプロモーションの1つの武器になっているという。
地域性をアドバンテージに「平屋」の依頼が増加
井野さんは、自然が豊かで広い土地を確保することが難しくないという環境を、自社の大きなアドバンテージととらえ、周辺環境と敷地の特徴を読み解き、そこにシンプルで美しい住宅を最適に配置することを信条とする。その上で、耐震性や温熱性能を確保し、・・・・【残り2189文字、写真12枚、平面図・矩計図2点】
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2021年12月号工務店の経営を支える設計力』(2021年11月30日発行)P.16~21に掲載しています。
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