建物の躯体性能強化による冷暖房消費の削減は、現代建築の主要な課題だ。
ドイツにおいては1980年代初めから義務規制が始まり、2000年代初めにはEUにおいて、「建物エネルギー証書」を新築と賃貸住宅で義務付ける制度が導入されている。
日本においても義務規制ではないが、近年、EUと類似のシステムが公民双方でいくつかあり、実用されている。
いずれの場合も、熱負荷(冷暖房負荷)の計算で中心的な指標になっているのは、「断熱性能」である。
前稿から引き続き、本稿で取り上げるのも、断熱の影で脇役になっている「蓄熱」を解説する。
建物の温熱性能の計算において「断熱」ばかりで「蓄熱」が全く省かれているという訳ではない。国際規格ISO13790においては、熱損失係数(Q値)の計算式で、躯体の熱容量も、「大雑把」には考慮はされている。ただし、Q値は、「空気の温度」を基準にしたものであり、マテリアルの絶対温度に由来し、気体を温めにくく、人間の体や躯体にダイレクトに熱エネルギーを与える「熱放射」は、ほとんど顧慮されていない。
また、熱容量だけでなく、「速度」も重要な要素になる。石や土といったミネラル系の素材は、短距離選手のように素早く吸熱・放熱するが、木材は長距離選手のようにゆっくりと吸熱・放熱する。前者は・・・
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