地域工務店の設計支援を行う建築家でルスカデザイン(山梨県北杜市)代表の和氣正頼さん(チカラボマイスター)は、コロナ禍で生活者の価値観が変化するなか、家づくりにおいて、施主と「パーソナルな関係」を構築できる“小さな工務店”のチカラが求められる時代になっていると説く。
ただ、そのチカラを工務店が発揮していくためには、いま、「デザイン」の本質を捉え直すことが必要という。和氣さんが工務店向けに展開する「デザインコンサルティング」のメソッドをひも解きながら、経営の安定化や家づくりの楽しさ、やりがいにまでつながる「設計力」のあり方を考える。
建築を本当に楽しむために
私はいま山梨県北杜市を拠点に、山梨や長野の小さな工務店さんに対して設計支援を行う「デザインコンサルティング」を主な仕事としている。
あまり聞き慣れないかもしれないが、契約前の顧客に対して工務店さんが行うプランニング打ち合わせに同席し、設計プランニングをサポートするのが役目。設計事務所と工務店の関係とは異なり、受注するのはあくまで工務店。私は工務店さんが担う設計の一部をサポートする。2019年からこの活動を始め、今年で3年目になる。
東京の大学で建築学を学び、卒業後、大手ゼネコンで7年現場監督として働いた。マンションの手抜き工事が社会問題になっていたころ。分譲マンションを購入した施主から、入居前のマンションの品質検査を受ける。つくり手と住まい手の信頼関係が希薄なやり取りにいたたまれなくなり、30歳でゼネコンを辞めた。
住まい手との信頼関係の中で建築をつくりたいと木造住宅を手掛けることを志し、山梨に移住して2年ほど大工見習いを経験した後、建築士事務所を開設した。別荘を主体とする地元の工務店に就職し、約15年間で200棟の住宅を設計した。
数多くの設計を任されるなかで、見た目のカッコよさを追求するデザインとは異なる、顧客の悩みや課題を解決するためのデザインがあることに気づき、あらためてその力を生かした家づくりを提供していくことで、小さな工務店のつくり手と、工務店に依頼する住まい手を一気に幸せにできると思い立ち、2016年にルスカデザインを起業した。・・・・
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン12月号/工務店の経営を支える設計力』(2021年11月30日発行)P.6~に掲載しています。
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