国土交通省は12月1日、建設業者団体ならびに主要民間団体に対して、「下請け契約及び下請代金支払適正化並びに施工管理の徹底等」について、通達を発出した。夏期・冬期は資金需要の増大が予想されることから要請しているものだが、今年は資材や原油の価格高騰等が続く中、とりわけ経営基盤の脆弱な中小企業が多数を占める下請建設企業に対する適切な代金支払等の確保について、十分な配慮が必要だと強調。さらに、新型コロナウイルス感染症とまん延防止措置の影響によって、「下請建設企業や技能労働者の事業や生業の継続に支障が生じることがないよう特段の配慮が必要」だとして、傘下企業への指導の徹底を求めた。
建設業者団体に対する通達では、社会保険加入の徹底や、建設業の働き方改革に向けた適正な工期設定・週休2日の推進、施工管理の徹底、技能労働者への適切な賃金の支払、国交大臣等への通達を理由とする不利益取扱いの禁止などを要請。
見積りに関しては、見積依頼・提出を踏まえた双方の協議による適正な手順の徹底(電磁的方法により行うことも可能)などを求めたほか、材料費や労務費等の経費を内訳明示した見積、材料費や燃料費等の適切な価格設定や工期設定・工程管理の配慮、工期内の賃金又は物価の変動による適切な対応などを求めた。
また、法定福利費及び労務費を内訳明示した見積書の提出を促し、その見積書を尊重することや、雇用する技能労働者に対し社会保険料の本人負担分を適切に含んだ額の賃金を支払い、社会保険への加入を徹底することなど、適正な法定福利費及び労務費の確保を要請している。
そのほか、▽工事完成通知日から20日以内できる限り短期間の検査完了▽検査完了後、下請負人から申し出があったとき直ちに引渡し▽下請代金は現金払とし、手形払を併用する場合には現金の比率を高めること▽できる限り短期間の一括決算方式及び電子記録債権による決済期間▽「下請セーフティネット債務保証事業」及び「地域建設業経営強化融資制度」の活用による支払の適正化▽CCUSの積極的活用・建退共制度の適切な運用――などを求めている。
資材業者、賃貸業者、警備業者、運送事業者など関係者に対しても同様の配慮を求めている。
■契約の適正化は発注者の利益にも
主要民間団体に対しても、建設業者団体と同様、傘下企業に対する指導の徹底を求めた。
建設業者団体への通達と同様、下請建設企業の経営の安定・健全性を確保するため、適切な代金支払等の確保について、十分な配慮が必要だと指摘。「発注者と元請負人の間の契約の適正化を図ることは、それぞれの責任と役割の分担が明確化するとともに、適正な施工の確保にも資することとなり、発注者の利益につながる」とした。
その上で、下請契約の適正化確保の観点から、▽発注者と元請負人の関係においても、材料費や燃料費等について市場価格を参考に適切な価格設定となるよう配慮すること、▽納期の長期化が見られる場合には、工期設定や工程管理に十分な配慮をすること、▽当初の契約どおり工事が進行せず、工事内容に変更が生じ、工期又は請負代金の額に変更が生じる場合には、双方の協議により 適切に対応すること――等を要請した。
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