YKK不動産(東京都千代田区)は12月2日、富山県黒部市で進めているパッシブタウン第5期街区の建築計画概要を発表した。第5期街区は、2011年に自然エネルギーを最大限に活用したローエネルギーな「まちづくり・住まいづくり」として始動した「パッシブタウン」の最終街区で、北陸地域初となる木造中高層建築の複合型賃貸集合住宅となる。パッシブタウン構想の集大成として位置付け、これまでの開発で培ったノウハウを生かしながら、クリーンエネルギーによる自立したまちづくりを目指す。2023年4月に着工し、竣工は2025年3月を予定している。
木造と一部鉄筋コンクリート造、鉄骨造のハイブリッド構造で、住戸部分が木造となる。 面積1万6278m2の敷地内に、6~7階建ての集合住宅を4棟建設する予定で住戸は90戸。総事業費は約50億円。
第4期街区で確立した県産材の利用と植林を行い、カーボンニュートラルの実現を目指す。また、「再生可能エネルギーのシーズンシフト」を掲げ、「Power to Gas(パワートゥーガス)」を取り入れる。Power to Gasは、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーで発電した際の余剰電力を水素、メタンなどの気体燃料に変換して長期間、大容量貯蔵する技術。
第5期街区では、春から秋にかけて太陽光発電で得た余剰電力で、水を電気分解し水素を生成し貯蔵。冬場は、貯蔵した水素を取り出し、燃料電池で発電し、住戸に電力を供給する。水素生成や水素を電気に戻す過程で発生する熱は、給湯に利用して、エネルギーを効率よく活用する。集合住宅でPower to Gasを実際に採用するのは日本初という。
基本計画と設計(建築)は、日本で初めて設計を手掛けるという木造建築のパイオニア、ヘルマン・カウフマン氏が担当した。基本設計(構造・設備)と実施設計は竹中工務店、ランドスケープ設計は設計組織プレイスメディアが担当。施工は未定。
YKK不動産の吉田忠裕会長は、「最終街区はカーボンニュートラルという大きなテーマへの挑戦。ここで得た知見や実績はグループに横展開できる。すでに建材や商品などにも波及させる取り組みを開始している」とした。
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