新建ハウジングが運営する工務店向けオンラインスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、吉岡孝樹さんの「『小なれど一流』を目指す社長への【選ばれる工務店への道】コラム」ルームからの記事です。
大学卒業後、アパレル企業を経て住まいに関わること30年。自ら住みたい家に暮らし、同じ価値観でお客様にも提供する仕事がしたくて2000年鹿児島に移住し“日本一の工務店”と名高い 株式会社シンケンに入社。その後、2002年自宅を新築、2010年著書『家づくりの玉手箱』発刊。本作は、氏の個人的営業トーク→シンケンHPのブログ→書籍化というプロセスで生まれたもので、全編にわたり新鮮な住まい手目線の写真と文体で表現され読者から絶大な支持を得ている。SNS時代にも通じる住宅コンセプトブックの金字塔とも言える一冊。2019年に株式会社家づくりの玉手箱を設立、『工務店の参謀』としての活動を開始。…
『日照変化』のプレゼン術
■新・戸建て分譲
全ての敷地共通の「大切な要素」
実在するどこかの土地に住宅を建てて暮らすとき、その敷地が特定された瞬間にいくつかの「大切な要素」が決まっています。
そのひとつに、太陽からもらう日照の条件があります。この条件はそこに住まう間、まず変わることはありません。
住宅の設計を行う際、この不変の条件をその場所の環境として個別に検討している工務店は、只今現在でも稀と言えます。これは設計を依頼する住まい手の期待値から考えると、とても不思議で不誠実な事のようにも思えます。
昨今では住宅の断熱・機密のスペックも上がってきていますが、実際の住まいでの温熱環境はその場所の日照条件と、どう折り合いをつけるかという事で大きく変わってきます。言い換えると、設計上の性能レベルは達成できたとしても、住まい手の満足を得られないという事です。なぜなら、建てる場所での個別の環境要素を考慮しない設計では、住まい手が期待した「体感」と実際に感じる「現実」には大きな相違が出る事があるからです。
その割には、この「建てる場所の個別条件」に無頓着な設計が多いのはどうしてなのでしょう?目指している成果が違うのか?単に無知であるのか?いずれにしても、住まい手にとってはありがたくない現実です。
そういう私も大阪で10年ほど住宅業界にいたのですが、この「大切な要素」をほぼ意識していませんでした。(しかも、この「大切な要素」がいかに大切かを教えてくれたのは先輩でも上司でもなく「お施主様」でした)
●鹿児島で学んだ新しい「大原則」
鹿児島に移り住んでからは、この「大切な要素」は住まいの提案をする際の「大原則」となりました。その敷地で、「うつろわざること」「うつろいゆくこと」を捉え区別して考えることがスタンダードであったのです。これには大変な衝撃を受けましたが、どう考えてもそれが「あたりまえ」だと思いました。
それ以降、自らのスタンダードも書き換えることにしたのです。
その後20年が経ちますが、多くのお客様にどうしたら年間の太陽の動きの変化とそのことを意識することの大切さをイメージしてもらえるのか?というテーマに腐心してきました。この「あたりまえ」が、なかなか分かってもらえないものなのです。これはプロもアマもなくほとんどの人がそうでした。現役の理科の先生までもが「おー!こんなことさんざん子供に教えているのに、自分で意識したことありませんでしたー!」といったこともありました。
●必要が生んだ小さな「発明」
そうして、これまで直感的に腹落ちするまで手を替え品を替え説明してきたのですが、ある方の助言でそれがふっと形になったのです。
題して『日照変化シミュレーター』
単純ではありますが、まさに発明であります…
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