住宅・建築物の省エネ性能に関する基準の検討を進めている、国土交通省・社会資本整備審議会の建築物エネルギー消費性能基準等小委員会と経済産業省・総合資源エネルギー調査会の建築物エネルギー消費性能基準等ワーキンググループ、環境省・中央環境審議会の建築物の脱炭素化に関する専門委員会は、11月24日に合同会議(座長=田辺新一早稲田大学教授)を開催。住宅性能表示で断熱等性能等級6、7を設定することや、ZEH・ZEBに関して太陽光発電設備の設置を要件化することなど、新たな基準に対して各委員から概ね賛成の意見が出され、座長一任としてほぼ原案通りまとまった。今後、パブリックコメントを経て、来年1月ごろにとりまとめ、3月ごろに公布となる見通し。事務局は来年秋の施行を目指すとした。
会議はまず、3省合同でエコまち法(都市の低炭素化の促進に関する法律)に基づく「低炭素建築物の認定基準」の見直しについて検討。ZEB推進の観点から、非住宅に求める一次エネルギー消費量の水準を現行の0.9(太陽光発電等の自家消費分含む)を変更。ZEB基準(ZEB Oriented)相当の省エネ性能と同じ、事務所等・学校等・工場等を0.6、ホテル等・病院等・百貨店等・集会所等を0.7(いずれも再エネを除く)にする。ただし、非住宅の低炭素建築物の認定基準は誘導すべき基準であることから「外皮基準を存置する」とした。また、住宅に求める省エネ性能もZEH基準の省エネ性能に改め、一時エネ水準(BEI)は現行の0.9から0.8にする。UA値もZEHと同様に変更する。
さらに、再生可能エネルギーの導入(太陽光発電設備の設置)を要件化。その上で、節水やHEMS、木造などから2項目以上の適合を求めていた現行の要件について1項目以上の適合に改正し、選択項目に新たに「太陽光発電設備等の再生可能エネルギー発電設備と連携したV2H充放電設備等」(EV充電可能設備を含む)を加えた。
続いて、国交省と経産省の2省合同会議を開催し、建築物省エネ法に基づく「誘導基準」の見直しについて検討した。住宅・非住宅の省エネ性能に関しては、低炭素建築物と同様に、ZEH・ZEBの基準と整合させるとした。非住宅の外皮基準の存置も同様。
非住宅に関してはまた、建築物省エネ法の省エネ基準(義務基準)を将来引き上げる際には、現行の省エネ基準で外皮基準が要件化されていないことも踏まえ、「外皮基準を要件化することを前提とせず、慎重に検討する」とした。
そのほか、共同住宅に関してもZEHの評価単位と整合させ、外皮基準は単位住戸、一次エネ消費量は住棟全体で評価を行なうように、「低炭素建築物認定基準」と「誘導基準」を改正する。外皮基準の評価に関しては今後、住戸間の熱損失の扱いについて検証する。
その後、国交省・社会資本整備審議会の建築物エネルギー消費性能基準等小委員会を単独で開催。住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく、住宅性能表示制度でZEH水準を上回る等級について審議した。
ZEH水準を上回る等級は、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量の削減率について等級6が概ね30%、等級7は40%削減を目安とする。この点について、等級6をHEAT20のG2仕様で、等級7をG3仕様で試算すると、各地域概ね目安の削減率に近くなる。5地域のみやや上振れするが6地域と同水準に修正すると目安に近い値になる。
また、ηACに関しては、暖房期のない8地域は等級6で5.1を設定。等級7については、現状では等級6を上回る現実的な日射遮蔽対策が想定されないため、ηACは設定しないなどとした。
等級6、7の新設について、住宅生産団体連合会からは「等級7をG3相当とすることは目指すべき水準として高すぎる」「高すぎる目標は営業現場の混乱を招く」といった懸念が示された。一方、鈴木大隆委員(北海道立総合研究機構理事)は、「住まい手にどのようなメリットがあるのか裏付けられた水準でなければならない。2、3%程度のメリットしかないなら数値を刻む必要はない」などと指摘。「作り手のためではなく住まい手のためでなければならない」と強調した。
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