木材の乾燥・加工技術が進化し、防火・耐火性能などの研究開発も進展していることにより、木材を活用できる用途・範囲は広がっている。ただ、多用すればするほどデザイン的な工夫の必要性は増し、さらに天然な素材ゆえ、メンテンナンスなど長期使用していくための対策も慎重に考えなければならない。ここでは、内外装を中心に技術やデザインなど、素材の特性を生かした木材活用のポイントを解説する。
外壁板張りは耐候性が高く、意匠上の差別化もしやすい。一方でコストが採用のネックになるケースが多い。だが菅沼建築設計(千葉県長生村)の菅沼悟朗さんは「工夫次第で外壁板張りのコストは抑えられる」という。予算管理に長けた菅沼さんのローコスト化の手法をまとめた。
外壁板張りには多くの張り方があるが、菅沼さんは価格を抑えるために3つのやり方を使い分けている。共通するのは実加工した高価な木製サイディングを使用せずに一般流通材を活用することだ。以下、それぞれの手法を見ていく。
横張りのポイント
一つ目は12×180×3650mmのスギの下見板を用いた横張りだ。木板の表面は製材したままの粗面かプレーナー掛けのまま、コストを抑えて塗料の塗布量を増やして塗料の持ちをよくする。この平板は規格品として一般流通していて安価だ。延べ床面積30坪強の建物で木板の費用は20万円弱で済む。張り手間は大工5人工程度だ。
菅沼さんは材木店で木板を購入し、その材木店の林場に立て掛けて乾燥を促進する。付き合いの長い材木店なので融通が効く。さらに現場納品後にバンドルを解いて材を広げ、乾燥を進める。その際に抜け節や死に節、割れがある材料や木表と木裏が同一面で製材されている木板をハネる。欠点材と割り付け上の半端を合わせて材料の1割はロスになる。
材料が乾いたら塗装だ。塗装は表面に2回塗りするほか裏面も1回塗る。表面と裏面で吸放出性に違いが生じると木板が反りやすくなるためだ。裏面は日が当たらないので塗膜劣化の心配はない。希釈率を上げて塗料を節約してもよい。塗った後の板は室内で乾燥させる。菅沼さんの設計は吹き抜けが多いので、その部分に木板を立て掛けて乾燥させる。
塗料が乾いたら木板を張る。重ねを確保しながら下から上に張り上げる。ポイントは板が重なる部分に釘を打たないこと。2点で固定すると乾燥収縮による木板の動きに追従できずに割れやすいことと、経年変化で木板が傷んだときに1枚ずつ交換できなくなる。釘はステンレスのスクリュー釘長さ50mmを使用して間柱まで貫通させる。
出隅部分は見切りの木材を入れて突き付けで納める。そこからの漏水を建て主が気にする場合、見切り材と木板の間に隙間を開けておいてシーリングを施す。見切り材に溝を切って木板を飲み込ませて納めることもある。
土台まわりの水切りは省略することが多い。基礎天端から30~50mm程度木板を伸ばせば水切り代わりになる。ただし、フラット35を利用する場合は水切りが必須だ。外壁板張りは経年変化による乾燥収縮の影響などから、壁内に多少の漏水はある。菅沼さんは外壁面で完璧に防水することは考えず、透湿防水シートによる2次防水を重視している。
塗装は材工で20万程度掛かる。菅沼さんは建て主によるDIYとすることが多い。塗料や道具、養生資材を購入しても6万円程度で収まる。
縦張り(押縁押さえ)のポイント
二つ目が12×180×3650mmのスギの下見板を突き付けで張り、継ぎ目を押縁で押さえる縦張りだ。押縁には13×45×3650mmの胴縁を用いる。木板を張る前の下準備や塗装に関しては横張りと同じだ。押縁の分だけ塗料が余計に必要になる。
この張り方の場合、・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2020年10月号/健康・エコな家づくり~木のチカラを再考する』(2020年9月30日発行)P.41~45に掲載しています。
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