新建ハウジングが運営する工務店向けオンライスクールサイト「チカラボ」から、工務店の経営者や実務者に役立つ記事をお届けします。
今回は、高橋剛志さんの「建築現場の真実の瞬間」ルームからの記事です。
株式会社四方継/つむぎ建築舎(旧すみれ建築工房・神戸市)代表。大工。
自身の苦しい経験から、職人が安心して将来設計を考えられる環境こそ工務店を強くすると実感。そこで、マーケティング理論を職人に教えることで、最大の顧客接点である職人自ら営業の役目を果たしてくれる仕組みを実践し、広告・販促なしで5億円の売上を達成。社員向け勉強会からスタートした「職人起業塾」は、クチコミで広がり他社社員、 JBN京阪神など多くのネットワークを巻き込む動きとなり国交省公認教育事業に認可されている。 住宅に加え、 店舗設計も数多く手掛ける。社員20人。
Q:職人が現場作業以外のことをしたくないと言うのですが、、にお答えします。
私が代表を務めている一般社団法人職人起業塾では、建築業を中心とする職人の正規雇用(新卒採用と育成、キャリアプランの構築)また、労働基準法を遵守した就業規則と賃金規定の運用を強くお勧めするとともに、それらを実装するための研修事業、制度整備等のサポートを全国の建築関連の事業者向けに行っています。その関係で、職人の雇用や育成についての相談が頻繁にあります。その中で非常に多いのはタイトルにある経営者と職人との間の意識の隔たりです。今回はそのアンサーを記事にまとめてみます。(写真は国土交通相事業の若手大工職人育成プロジェクトの現場から)
未来から目を逸らす工務店経営者
私は一般社団法人での事業として研修やセミナー、ワークショップなどを毎週数回ぐらいの頻度で頻繁に行っておりますが、決して講師業をなりわいとしているのではなく、これまでの20年間、そして現在も実際に職人を正規雇用し、育成する工務店経営者として実業を行っております。
一般の方にはあまり知られておりませんが、建築業界では月給制で労働基準法を完全に守って職人を雇用していると胸を張って言える工務店経営者がほとんどいないのが現状で、加速度的に深刻さを増している職人不足問題には強い危機感を持ちながらも、なんら能動的に取り組まれない事業所が全国で30,000社とも50,000社とも言われる工務店のほぼ全てだと言っても過言ではない位のひどい有様です。
ポイ捨て職人が便利で効率的
とは言え、建物を建てるには職人が必要で、どこの事業者もそれなりに職人を抱えています。しかし、建築事業は一件あたりの単価は大きいが繁閑の差が激しい業態と言われており、必要な時だけ職人を雇い、暇な時はいらない職人を手放して固定費を極力抑える方が経営的に良い(というか表面的に経営が楽)とされる風潮があります。職人育成をしている事業所でも5年ほどでそれなりに技術を身に付けた職人を独立と言う名の下請け職人にして、外注扱いにし、固定費がかからない様にする会社もある位です。私からすると、職人は道具じゃないのだから、都合よく使ってポイ捨てするような雇用の仕方に憤りを感じますし、年齢を重ねて職人としての生産性が落ちた後のセカンドキャリアを構築するまでが職人採用、育成する側の責任だと思っていますが、目先の損得勘定だけで事業を行われる経営者も少なくなく、そんな方々にとっては私の考え方はただのアホに見えるようです。
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