ウッドショックを契機に国産材に注目が集まっている。この需要を恒久的なものにできるのか。国産材活用の課題と見通しについて、丸太の生産から製材、製材品の販売までを一手に手掛ける協同組合兵庫木材センター(兵庫県宍粟市)理事長の八木数也氏に聞いた。
Q.1 丸太の安定供給には何が必要なのか?
A. 丸太の価格が不安定だと生産量は増えない。丸太を増産することで素材生産業者の利益が増える市場のあり方が必要。それにより山側に利益還元できる
◉国産材の利用拡大の課題の丸太の安定供給が指摘される。行政が言う安定供給は常に川下側からの視点。端的に言うと「製材所がほしいぶんだけもってこい」ということになる
➡安定供給の前提となる安定価格について議論されることは少ない
◉素材生産業者は、原木市場の価格が下がったら休み、高くなったら伐採して売るという動き方をする。丸太の価格が不安定だと生産量も安定しない
◉ウッドショック後は高値で推移しているが、先行きは不透明だ。伐れば伐るほど価格が下がって痛い目を見た経験が何度もあるので、素材生産業者は模様眺めをしている。丸太の生産量を増やすことで素材生産業者の利益が増えるように市場のあり方を変える必要がある
Q.2 丸太の価格はどのように見ればよいのか?
A. 材の価格だけではなくB〜D材の価格も重要。B材の価格は現状m3あたり1万円。そこから運賃や手数料で3000円が引かれる
◉山の立木は多様であり、さまざまな大きさやかたちの丸太が生産される。最も高価で利益率が高いのがA材と呼ばれる製材用の丸太。この丸太の価格が素材生産業者の利益に直結する。現在はウッドショックにより利益が出る水準に回復している
◉A材のほか欠点を含む材として、ラミナや合板に用いられるB材、梱包材用のC材、チップになるD材と呼ばれる丸太が生産される。B〜D材もウッドショックにより価格上昇したが、もともと安価であり、素材生産業者の手取りは少ない
➡A材だけでなく、B〜D材を含む丸太全体が適正価格で売れること。加えて必要数量の需要がないと丸太の生産量は増えない
◉B材はラミナ・合板用に3mないし4mに切り揃え、曲がり部分は切り捨てる。価格は現状でm3あたり約1万円。しかもこの1万円はすべて素材生産業者の手元に残るわけではない
◉山から原木市場に搬出すると手数料がm3あたり1500円、運賃が1500円。合計3000円が引かれるため手元には7000円しか残らない。C・D材の単価はさらに安い。この売り上げ単価から搬出費と山代金を支払いするのは困難だ。これが丸太の生産量が増えない一因
Q.3 丸太の生産を増やすと価格はどうなるか?
A. 素材生産業者の生産性が向上したため、丸太を目一杯生産すると製材工場は消化できなくなる。丸太がだぶつき・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン11月号/工務店経営のための技術習得講座【攻めと守りの技術研究所~知識ゼロから学ぶ 国産材まるごと超入門】』(2021年10月30日発行)P.46~に掲載しています。
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