浜松建設(長崎県諫早市)は今年8月、社内にリノベーション専門店「KIGUMI(きぐみ)」を立ち上げた。その第1弾の展開として、同市赤崎町にある農業用倉庫として使われていた築50年の古民家をリノベし、宿泊施設を兼ねるモデルハウス「三〇七(さんまるなな)」としてオープンした。宿泊施設として運用しながら、暮らしに対する価値観や自社が提供する住宅の世界観、設計力・施工力を発信する拠点にも位置付けている。
駐車場より収益性高い
同社社長の濱松和夫さんは「私たちがやりたいのは、家ではなく暮らしを提案すること。その暮らしの魅力を発信する拠点が宿泊体験型のリノベモデルハウス」と説明する。これまでも同社は、3000坪の緑が豊かな丘陵で本社のほかカフェ、生活雑貨店などがあるビレッジ「風の森」、その隣接地でホテル「LIFESTYLE HOTEL 風の宿り」を運営しながら、暮らしへの価値観や住まいの世界観を伝えてきた。
オーナーが家族と一緒に乗っていた思い出の車が「プジョー 307」だったことから名付けた宿泊施設兼モデルハウスは、長年にわたり空き家の状態だった。当初はオーナーから同社に、「解体して駐車場として運用したい」と相談があったが、「諫早にある古民家の多くはリノベすればよみがえらせることができる」と考えていた濱松さんは、オーナーにリノベして宿泊施設として運用することを提案。駐車場よりも収益性が高い運用計画も示しながら、地域の気候風土に合った建物を残していきたい想いも伝えた。同社が運営しているホテルのことを知っており、濱松さんの想いに共感したオーナーは、同社の提案を承認。リノベにあたり建物を調査すると「風通しが良かったため、驚くほど状態は良好で、朽ちている箇所もシロアリ被害もなかった」という。
三〇七は、ノウハウのある同社が、集客から管理・運営まで一括して代行。オーナーの好意で、同社のリノベモデルハウスとして併用することも決まった。同社で広報企画を担当する内藤恭祐さんは「オーナーとのコミュニケーションを通じて深い信頼関係が築けたことが大きく、設計・施工を含む全てのプロデュースを一任してもらえた」と話す。総工費は2500万円だった。三〇七の宿泊料は、1人1泊7000円。10月中旬までに約50組が宿泊したという。
体感できる完成形を提示
濱松さんは「実家や古民家をリノベするといっても、生活者にとっては完成形を想像することが難しいのが現状で、県内でまだ市場そのものが形成されていない。そうした中で、実際のモデルを拠点の1つとして設けることで、五感で体感してもらい、リノベに対するハードルを下げることが期待できる」と話す。
三〇七のリノベでは、古い柱や梁をそのまま生かしたデザインとし、素材を魅せることにこだわった。室内の壁は漆喰で仕上げた。土間とつながる大開口の先には・・・・【残り1161文字、写真20点】
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン11月号/工務店らしいリノベーション戦略』(2021年10月30日発行)P.32~に掲載しています。
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