地震で倒壊せず損傷を最小限に抑えるには、耐震に加えて制震システムを組み込むことが有効だ。制震システムは多数存在するが、公的な認証がなく、評価がしづらい。そこで制震システムを積極的に採用している益田建設(埼玉県八潮市)の鈴木強さんの制震システムの選定方法と活用方法を紹介する。
木造住宅が大地震に見舞われた時、構造用合板などの耐震要素が損傷しなければ再度の大地震に対しても耐えられる。だが最初の地震で損傷してしまうと、次の地震で建物は倒壊してしまう。こうした繰り返しの大地震に耐えるための手法として期待されているのが制震だ。
制震システムは制振部材が地震のエネルギーを熱などの別のエネルギーに置き換えることで吸収し、耐力壁に掛かる力を軽減する。躯体の変形を抑えることで地震時に損傷しにくくなる。耐力壁とは異なり、変形後も元に戻り、再び変形を抑える減衰力を発揮するのも大きな特徴だ。
設計はメーカー任せ
制震システムにはさまざまな製品があるが、耐力壁のように国が定めた性能値の認定がなく、製品比較がしづらい。メーカーの試験データも1枚の壁を対象に制震システムのある時とない時の比較試験をしている程度のものが多く、費用が掛かる住宅の実大振動台実験をしている製品は少ない。製品の特性や性能が極めて掴みにくいのが現状だ。
公的なお墨付きである壁倍率を取得した製品もあるが、制震システムの耐力壁としての側面を評価しているだけで、制震システムとしての評価ではない。また、設計に制震システムを組み込む際にはメーカーが独自の検討をして、配置のアドバイスをするのが通例だ。このように制震システムは設計者からするとブラックボックスだ。
「構造計画に際しては偏心率などに留意しながら耐力壁のバランスを取る。そこに制震システムを入れることで、制震システムが意図しない耐力壁として働き、バランスを崩すことが懸念される。本来は構造計算ですべてクリアにしてから採用したい」と鈴木さんは歯がゆい現状を語る。
制震システムのタイプ別特徴
制震システムのメカニズムにはいろいろな方式がある。これも混乱を招いている理由の1つだ。以下に主な方式を見ていく。
①オイルダンパー
柱と土台、柱と梁をつなぐように斜めに設置する比較的小規模な制震システム。力が掛かると変形して熱に変わる。速度依存性があり、早い速度で押されると抵抗力が高くなり、ゆっくり押されると抵抗力は低い。早い速度で押されたときに固くなりすぎて柱・梁などの接合部を壊さないように、一定の力で抵抗力が頭打ちになる調節機構を備えた製品が望ましい。車の部材の機構などを流用できるので、比較的安価だが、1棟あたりの設置数は十数個と多めになる。・・・・【残り2252文字、写真7点・設計図など8点】
この記事は、『新建ハウジング別冊・プラスワン4月号/令和流・高性能住宅~今求められるレジリエンス性能~』(2020年3月30日発行)P.46~に掲載しています。
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