湿式外断熱工法は、日本の木造住宅におけるシェアは大きくない。 そんな中で、タナカホーム(宮崎県都城市、田中誉宗社長)は2010年、業界に先駆けてオリジナルの湿式外断熱工法「MeTAS(ミタス)」を開発し、型式認定や防火認定も取得した。 年々改良を続けており、今年に入りUA値0.3W/m2Kを切る断熱性を実現するに至った。 将来的には、パッシブハウスレベルまで断熱性能を高めることを目指す。〈※掲載情報は取材時のものです〉
EPSの特性を最大限に生かす
ミタスで使用する断熱材は、充填断熱は高性能グラスウール20K(熱伝導率0.034W/m・K)105mm厚、付加断熱はビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS、同0.041W/m・K)50mm厚だ。EPSは200mm厚まで対応が可能。耐力面材としてモイスTMを外周に張り、その上に透湿防水シートを挟んでEPSを施工する。UA値は、2019年度の仕様で0.34。HEAT20・G2を余裕でクリアするレベルだ。
独立した気泡で構成されているEPSは、透湿性に優れている。通気層を設けられない湿式外断熱工法でも、断熱材自体が透湿によって通気層の役割を担うので、壁内結露のリスクを心配する必要はない。2011年に型式認定を取得した際も、通気層なしで劣化対策等級3を取得することができた。
発泡系など、ガスを封入して性能を高めながら、厚みを抑えた断熱材もあるが、こうした製品には経年変化による性能低下のリスクがつきまとう。一方、経年変化の起きにくいEPSは、断熱性能も安定しているため、長期の性能維持にも貢献する。
外壁の仕上げは、EPSの上にベースモルタルを塗って、クラック防止のグラスファイバーメッシュをモルタルで塗り込み、仕上げ材を施工する。仕上げには、撥水性に優れ、汚れが付きにくいドイツ・Sto(シュトー)社の塗り壁材を採用している。
平屋や蟻害を踏まえ床断熱に
足元の断熱は床断熱。剛床工法とし、押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b「カネライトフォーム」75mm厚を施工して床下地合板28mm厚を張る。
床断熱にしているのは、宮崎県は土地が広くかつ安いため、新築受注における平屋の割合が高く(都城本社では9割が平屋)、基礎断熱ではあまりにも割高になってしまうからだ。その上、蟻害のリスクが高いエリアでもあるので、確立された安全な手法をとっている面もあるという・・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・プラスワン4月号/令和流・高性能住宅~いま求められるレジリエンス性能~』(2020年3月30日発行)P.10~に掲載しています。
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