JBN・全国工務店協会の連携団体で、千葉県内の工務店43社が所属する「ちば木造建築ネットワーク」は、被災住宅の補修工事に対応できる事業者をウェブサイトに掲載するなど、台風15号被害への対応を進めている。が、団体としての支援体制整備が進む一方で、現場では「住宅を補修したい被災者」と「対応する工務店」のミスマッチが起きているという。同ネットワーク会長の竹脇拓也さん(タケワキ住宅建設社長)に実態を聞いた。
※本記事は新建ハウジング別冊・プラスワン2019年11月号「工務店が事前にやるべき風害対策を考える」に掲載した記事を再編したものです。
職人不足で事故リスク増大
同ネットワークの会員で特に被害が大きかったエリアにある工務店は10社前後。2週間で約200件の依頼に対応した会社もあるが、竹脇さんのヒアリングによると、ブルーシートや土のう袋などの資材が不足する事態は起きなかったという。竹脇さんはその理由を「東日本大震災を契機に、備蓄していた工務店が多かった」と推察する。一方で、瓦や板金の職人を中心とする人手不足は非常に深刻だ。屋根の上での作業を指導できる人材がいない現場では、安全帯がきちんと使われていないなど、転落事故につながりかねない状況が見受けられるという。
業者による対応を待てず、自らブルーシートをかけようとする被災者もいるが、家全体を覆うほどのシートは非常に重い。竹脇さんは「高所作業に不慣れな被災者が、重いシートを抱えて屋根にのぼることで、事故が起こるリスクも増える」と警鐘を鳴らす。
さらに10月12日には、台風19号が関東地方を直撃。15号のような大きな被害はなかったものの、せっかくかけた屋根のブルーシートが飛んでしまった住宅も多かった。今後も天候の悪化に備え、早急に「ブルーシートが不要な状態まで」補修することが必要だ。
しかし、瓦や板金の職人を待っていては、いつまでも復旧は進まない。そのため竹脇さんは「アスファルトシングル葺きなど、大工でも施工できる屋根材の使用も考えている」と話す。
遠方被災者対応がネックに
同ネットワークは、千葉県からの要請を受け、「被災した住宅の補修工事(ブルーシート張り含む)が可能な業者」として会員8社をウェブサイトに掲載。それを県が災害関連情報として県のサイトで紹介している。被災者はそのリンクから同ネットワークのサイトへ飛び、そこから各工務店に問い合わせを行う。被災者から連絡を受けた工務店は、現地に赴いて被害を調べ、個別に見積もりを行う。工務店によっては、遠方の被災者に対応しなくてはならないケースも出てきてしまう。
しかし、問い合わせの段階で被害状況を判断する材料は「電話で被災者から聞いた話」のみ。現地に行かないと正確な状況はわからない。そのため、実際に行ってみると瓦が数枚飛んだ程度の急を要さない被害だったというケースも多い。それが蓄積すると、通常業務に支障をきたす。
工務店が個別に対応するため、時間や経費もかさむ。「工事内容や費用で折り合いがつかなかったら、トラブルの原因になるかもしれない」(竹脇さん)。「早く住まいを直してほしい被災者」と「助けたい気持ちはあるが、通常業務もある工務店」がかみ合っていない現状があるようだ。・・・・【残り715文字、写真・図4点】
この記事は、『新建ハウジング別冊・プラスワン11月号/工務店が事前にやるべき風害対策を考える』(2019年10月30日発行)P.18~に掲載しています。
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