政府は10月26日、2021年版「過労死等防止対策白書」を閣議決定した。今年7月に変更した「過労死等の防止のための対策に関する大綱」について解説。新大綱では、▽コロナ禍の対応やテレワーク等の新しい働き方を踏まえた取り組み、▽建設業など重点業種等に加え新しい働き方や社会情勢の変化に応じた対象を調査研究に追加、▽過労死遺児の健全な成長をサポートするための相談対応の実施、▽数値目標に「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」や「勤務間インターバル制度の周知、導入」に関する目標などを更新――などを盛り込んでいる。
白書のうち、労働時間等の状況を見ると、労働者1人当たりの年間総実労働時間は緩やかに減少。2020年は前年比48時間の減少で8年連続の減少となった。一般労働者は1925時間、パートタイム労働者は953時間。主要産業別に見ると、建設業の年間総実労働時間は1985時間で、全産業平均よりも長い。
一方、所定外労働時間は、2010年以降、120~132時間の範囲で増減を繰り返しており、2020年は110時間で前年比17時間の減少となった。建設業の月別所定外労働時間は、1~3月は前年と同水準だったが、4月は13.3時間(前年比1.5時間減)、5月は10.9時間(同2.6時間減)、6月12.1時間(同1.9時間減)で、7月以降も各月1時間以上の減少となった。
過労死防止大綱で数値目標の対象となっている「月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合」を業種別にみると、運輸業・郵便業、教育・学習支援業、建設業の順に割合が高い。ただし、建設業は2018年は10.2%だったが、2019年9.7%、2020年7.9%と減少傾向にある。また、2019年度の建設業の年次休暇取得率は44.9%で、16産業別で3番目に低い。
過労死等の状況について、2020年度の業務における過重な負荷により脳・心臓疾患を発症したとする労災請求件数は784 件で、前年度比 152 件の減少となっている。
業種別(大分類)でみると、労災請求件数は運輸業・郵便業158件、卸売業・小売業111件、建設業108件の順で多い。労災支給決定(認定)件数も運輸業・郵便業58件、卸売業・小売業38件、建設業27件の順に多かった。
業種別(中分類)では建設業の「総合工事業」の労災請求件数は44件で3位、「職別工事業(設備工事業を除く)」38件で5位、「設備工事業」26件で7位。労災支給決定(認定)件数は、「総合工事業」12 件で3位、「設備工事業」11件で4位、職別工事業(設備工事業を除く)」4件で12位だった。
業務における強い心理的負荷による精神障害を発病したとする労災請求件数は、長期的にみると増加傾向にある。業種別(大分類)の建設業の請求件数は89件(前年度比4件減)、支給決定(認定)件数は43件(同2件増)。業種別(中分類)では、建設業「総合工事業」の請求件数は52件で8位。労災支給決定(認定)件数は27件で4位となっている。
建設業では長時間労働の是正策として、①働き方改革に関する関係省庁連絡会議・協議会の設置、②建設工事における適正な工期設定等のためのガイドラインの策定、③新・担い手3法の改正――などの取り組みを実施。③では、中央建設業審議会で2020年7月に「工期に関する基準」が作成、勧告されている。
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