でも、「全部入り」を提案されたお客様は、どうするでしょうか。
ラーメンだったらチャーシューから海苔から煮卵から野菜から、全部入っていておいしそう。1000円ってちょっと高いけど払えない金額じゃないし、毎日ラーメン食べるわけじゃないし、まあいっか、となるわけなんですけれども、住宅となるとそうはいかない。
何しろ払う金額のケタが違います。生涯年収の何割という世界です。ある意味、何十年間も毎日代金を払っているようなものです。そもそも、まあいっか、では収入以上のローンは組めない。
だからラーメンで言う「全部入り」で提案されると、「うん、すごくおいしそう。だけど、1000円は払えないからそれを600円にしてもらえる?」っていうことになる訳です。
言われた方は、仕方ないから量を減らしたり質を下げたりして全部のクオリティを少しずつ落としてどうにか600円の「全部入り」を作る。そうするとやっぱりどうも、おいしくない。
すると、次からお客様は来ない。住宅だと「次」はほとんどないので「次のお客様」につながりにくい、ということになります。
おわかりでしょうか。まずいコストダウンとは、全部のクオリティを下げた「全部入り」を作ろうとすることなのです。
では、つくり手もお客様も幸せになれる、おいしいコストダウンって、あるんでしょうか。
あるんです。
それは、一切手抜きなしの「素ラーメン」を作ることです。
たとえば380円で、麺もスープもすごくおいしい素ラーメンを作る。それにお客様のそれぞれの要望に応じたオプションを乗せていく。
そういうやり方なら、つくり手もお客様も無理がない。誠実なつくり手は、コアの部分については自分が良いと思うものを作れる。お客様は自分の必要なもの「だけ」を手に入れることができる。
特にお買い物上手な今の住宅一次取得者層には、その方が正しいアプローチだと思います。
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