Web連載の2回目です。今回もコストダウンについてお話します。コストダウンとは「安いものを安くつくる」ということではありません。今までと同じか、それ以上の価値を持ったものを、今までよりも安く提供できるようにすることです。そのためには部材と工程を見直して、作業工程全体の合理化を考える必要があります。
価格さえ下げれば、どんどん売れるものでしょうか。たぶん、そうではないでしょうね。では、何のためにコストを下げるのか。具体例は追ってご紹介していこうと思いますが、今回は今やるべき、正しいコストダウンの方向性について知っていただこうと思います。
まったく手抜きはなし、コストも下げました。でもただの安いだけのものを作ったのでは、ダメなのです。
あなたがつくったものの意味を、お客様に説明することができるでしょうか?あなたが作ったものは、お客様が本当に欲しがっているものなのでしょうか?
偉そうで恐縮ですが、家づくりに限らず、仕事をするときは常に、目的と手段を混ぜてしまわないように気をつけましょう。一所懸命になればなるほど「手段の目的化」が起こりがちです。自分が今やっていることは何のためなのか、常に自分をウオッチするくらいのつもりでちょうど良いです。
コストダウンが目的ではない
当然コストダウンは、それ自体が目的ではない訳です。売れること、お客様に納得して買ってもらうことがそもそも目的だったはずです。
よくありがちなのはこんなかんじです。
「お客様に選んでもらうには、お客様が欲しがっているものを提供すればいいだろう」と、それは何だろうかと丁寧にお話を聞く。そしてお客様が「こういうものが欲しい」というものを全部作る。すると、コストが上がってしまってお客様が減ってしまう。いやいや、お客様を増やすには、やはり価格を下げないと…、と安いものを安くつくる。すると売上は上げることができたとしても、利益が増えないので忙しいばかりでいっこうに経営はラクにならない・・・。
こんな困ったループにはまってしまう。
それではちゃんとコストダウンできてはいない。「あなたの欲しかったものはこれでしょう?」というお客様の要望から商品を作る「マーケットイン」と「こんなものがあるんですよ、いかがですか?」というつくり手の提案から商品を作る「プロダクトアウト」のあいだで、行ったり来たりして、負のスパイラルに落ち込んでいくばかりです。
選べる仕組みを作る
これを正のスパイラルに変える方法があります。簡単です。
お客様の要望を、一つに限定しないことです。
そんな簡単なこと?とお思いになるかもしれません。でも、人によってして欲しいことは違うでしょう?お客様の要望をこちらから一方的に決めつけるのではなく、選択肢を設けてお客様自身に取捨選択してもらう、「選べる仕組み」を作るのです。
最近もののたとえとしてよくお話ししているのですが、ラーメンや携帯でいうところの「全部入り」って、ありますよね。定義としてはその商品において、必要と思われるものはあらかじめ全部搭載されている状態を指します。この必要と「思われる」ってところが問題なのですが、それはさておき。
一所懸命な工務店ほど、家づくりにおいてその「全部入り」を作ろうとする傾向がある。それがお客様に対する誠意であり、親切だと思っているからです。
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