今春顕在化したウッドショックにより、国産材への注目が高まっている。しかし、これが一時的な動きに終われば、再び国内の林産地や、担い手である林業や製材所は厳しい状況に置かれるだろう。
家づくりを持続するには、森林も持続可能でなくてはならない。
設立当初から、全国の林産地と連携した木の家づくりを続けてきたMs建築設計事務所(大阪府吹田市)・三澤文子さんに、国産材を使う意義やポイントを聞いた。
産地に助けられる側に
36年前に事務所を設立してからずっと、国産材を使った木の家づくりを続けてきましたが、ウッドショックの影響は全く受けていません。関東の案件で、工務店が下地材の調達に苦労したことはありましたが、関西の林産地から調達すれば、輸送費を含めても関東で調達するより安いことがわかり、下地材も支給として、事態は収まりました。
事務所開設当時は、国産材の乾燥材が入手しにくかったこともあり、構造材を私たち自ら手配して、施主が産地から直接購入するスタイルを今も取っています。設計のスタート時は、工務店も決まっていない段階なので、必然的に普段からお付き合いのある産地を紹介することに。
また、設計依頼があったら、まず山側に連絡して調達の見当をつけてもらっています。関係の深い工務店も、先を読んで、いつ、どれくらいの材が必要かを把握しているので、困ることはないでしょう。産地と関係を深めてきたおかげで、今はむしろ私たちは助けられる側です。
木材の再生産を住宅が担う
日本の住宅は、58.9%が木造です。大工の技術を継承した工務店が生産体制を確立しているうえ、資源となる木もたくさんあります。地元にある材料で家を建てるのは、ごく自然な話であり、合理的でもあります。
木材は再生産が可能な資源です。しっかり植林さえされれば、木は育つのですから。木と同じぐらい生きる(建築時に植林した木が、解体時には成長している)木造住宅をつくり、地域の林業を支えていくことは、循環可能・サステナブルな社会を構築すること。これこそが木造住宅をつくる仕事の本来の意義であり、私たちができることなのです。
各地の林業や製材所も努力して需要に応えていますし、地方自治体も一生懸命、地域材の振興に取り組んでいます。でも、工務店が動かなければどうしようもありません。木は手間がかかりますが、木を使う技術を持っているはずの大工・工務店が、手間の価値を見出さないのは不思議です。・・・・【残り2006文字、写真6枚】
この記事は、新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン10月号(9月30日発行)P.8~に掲載しています。
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