国産材による木の家づくりをサステナブルにするためには、林業が持続可能であることが大前提であり、工務店や建築家には、山で何が起きているのかについて、常に関心を持ってもらうことが必要だと考えている。自分たちの使っている木がどのように生産されているかを把握するように努め、サステナブルな林業経営を後押しする木の家づくりを目指してほしい。
大型機械や皆伐はよくない?
9月15日に放送されたNHKのクローズアップ現代+では、「宝の山をどう生かす 森林大国・日本 飛躍のカギは」とのテーマで林業が取り上げられた。全国放送で林業が特集されることは滅多になく、放送前から話題になっていたので、本誌の読者でもご覧になった方は多いだろう。
番組では、国産材の供給量が増え、木材の自給率が上昇する中で、生産性を高めるために、大型機械を駆使して立木をすべて伐採する皆伐が全国で盛んに行われていること、皆伐後に植林が行われるのは全体の3割ほどしかなく、伐りっ放しで放置された山では土砂災害が発生する恐れがあること、こうした実態がある一方で、山を傷めないように最低限の路網を整備し、大きな機械を使わずに間伐を繰り返して継続的に収入を得る「自伐型林業」が各地に広まっていることがレポートされた。
番組のスタンスとしては、皆伐を全否定はしていないものの、「宝の山」である国内の森林を生かす「持続可能な林業」のスタイルとして、自伐型林業を推している印象を受けた。視聴した人の多くが、大型機械の利用や皆伐は「よくない」と感じ、自伐型林業に好感を抱いたのではないか。
「丁寧な作業」は誰もがやるべきこと
しかし、当然のことだが、大型機械を使った現場や皆伐がすべて悪いわけではない。人家の近くや急傾斜地での大面積皆伐には確かに問題があるし、大型機械を導入すれば、効率を上げようと作業の仕方が荒っぽくなる恐れもある。しかし、それらは、山を丁寧に扱い、無秩序な伐採や乱暴な作業は控えようと心掛ければ、避けることができる。
常に若木を生産できるようにしたり、所有林をさまざまな樹齢の木で構成できるようにと、定期的に皆伐を行っている林業経営者はたくさんいる。伐採後は当然、植林を行っているし、スギやヒノキの生産には向かないような奥地なら、広葉樹が自然に生えてくることを期待して植えない場合もあるが、それも含めて、彼らは山づくりに常に真摯に取り組んでいる。大型の林業機械を保有している伐採業者でも、機械はまさに使いようであって、山を傷めないように丁寧な仕事をしている業者はいくらでもいる。
番組が推す自伐型林業とは、・・・・ 【残り2835文字、写真4枚、図1点】
この記事は、新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン10月号(9月30日発行)P.14~に掲載しています。
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