2019年9月9日に千葉県を襲った台風15号は、南房総を中心に大きな被害をもたらした。本稿では被害建物を取材し、建物がどのように壊れたのかを考察。建物の長寿命化のために設計・施工上配慮すべきポイントについてまとめた。
建物被害の一部は建物以外に原因がある。最も多いのは倒木だ。瞬間風速40m超の風を受けると、直径50㎝の樹木が倒れ、斜面地では斜面崩壊を引き起こすこともある。建物配置や擁壁に配慮が必要で、敷地内の物置も要注意だ。耐風性や耐久性が考慮されておらず、強風で破壊されたり、転倒した事例が目立った。
大きな被害を受けた建物の多くは築年数を経た古い建物だ。新しい建物には被害は少なく、最近の工法は大型台風にも耐えられることが実証された。ただし、築年数が浅いことが条件だ。被害を受けた古い建物は劣化が進んでいた。最近の住宅も劣化が進み、初期性能から著しく低下すれば、同程度の被害が生じる可能性が高い。維持管理が重要だ。
材料や接合具の劣化
建物の劣化のうち、直接被害に結び付いたのが釘やビスなどの劣化だ。錆びが進むと外装材が小さな力で簡単に外れる。ステンレス釘やビスの選定は必須だ。同様に外装材の劣化により、釘やビスが効かなくなる事例も多い。
外装材の劣化は屋根内や壁内への浸水も招く。合板に染み込んで層間剥離を起こしたり、さらに内側に浸水して下地材や構造材を腐らせたりすると被害が大きくなる。
意外に影響が大きいのが庇や水切りの劣化だ。これらは納まり上、外壁とつながっている。庇などが劣化して飛ばされると、そこから風が入り込んで外壁もめくり上げられる。
屋根勾配の影響
部位別に見ると建物被害は屋根に集中している。高所にあり、風を遮るものがなく強風をまともに受けるためだ。もう1つの理由は改修や補修の頻度が低いこと。外壁は汚れや劣化が目に付きやすく、建て主の補修や改修の意識が高くなる。一方、屋根は劣化状況が目に付きにくく、改修の動機付けが得にくい。工務店も屋根の現況調査を行う機会が少なく、経年劣化の知見が浅い。同じ建物でも外壁より屋根の劣化が進んでいることが多く、被害にも結び付いている。
屋根には被災後の問題もある。・・・・
【残り2306文字 写真48枚、図表22点】
さらに漏水対策や台風に強い建物形状についてもポイントをまとめました。
この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・プラスワン2019年11月号/工務店が事前にやるべき風害対策を考える P.32~(電子版はP.34~)』(2019年10月30日発行)に掲載しています。
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