今回はマンションにおける本格的な断熱改修の事例を紹介する。 マンションは外部に接する面が少ないため、断熱部位が少なくて済み、戸建て住宅と比べて安価に断熱改修が可能だ。 省エネルギー性や快適性を高める効果も大きいので、もっと検討されてよいだろう。
浅井治彦さんがこのマンションを購入したのは約25年前。子育てを考えて今のマンションを購入し、子供とともに暮らしてきた。子供も巣立ち、今は妻の夢さんと2人で暮らしている。
浅井邸の床面積は約58m2と広くないが、狭さは感じない。過去にリフォームを何度か行い、空間を無駄なく最大限に活用しているためだ。
浅井さんの職業は工業デザイナーで、大学の教授も務める。過去に生活雑貨のデザインを多数手がけており、ものや収納の寸法体系が頭に入っている。無駄のない空間活用はお手のもので、過去にリフォームを担当した建築家も舌を巻いたという。
そんな浅井さんのもう1つの側面が「DIYの熟練者」であることだ。初期のリフォームは収納などに浅井さんのDIYが組み込まれている。木質系の材料を使用し、精度よく納められている。
スペースを最大限に活用
浅井さんの空間活用の特徴は、1つの空間を複数の用途として使うこと。ダイニングは食事をする場所とパソコン作業をする場所を兼ね、リビングはくつろぐ場所と打ち合わせをする場所、さらには寝室も兼ねている。
それらを可能にしているのが建具の工夫だ。リビングにはホワイトボードを兼ねた白い面がある。これは壁ではなく建具で、ベランダ側に水平に移動する。ただし、引き戸のように横方向にスライドするのではなく、前後に移動するのだ。ホワイトボード兼建具の背後にはベッドが仕込まれており、ホワイトボードの建具を移動させ、ベッドを引き出すことで、リビングは寝室に様変わりする。
もう1つのポイントが収納だ。特にキッチン周りは密度が濃い。浅井さんはキッチンツールの開発に携わった時期があり、日常的に料理もする。キッチンツールの寸法や合理的な配置のセオリーは熟知している。そのことが端的に伝わるのが流し台の背面の収納。扉にも収納が設けられるなど、収納物に合わせたさまざまな区分けがなされている。
キッチンカウンターも重要な要素だ。浅井さんはホームパーティーを開くことが多く、来客はときに10人以上となる。キッチンカウンターが居場所の1つとなるため、狭さを感じずに済んでいる。こうしたスペースの兼用から収納の工夫に至る細やかな工夫により、58m2という広さ以上にゆとりある生活が可能になっている。
断熱改修のポイント
そんな浅井さんが、研究テーマとしてここ数年取り組んでいるのがエコデザインだ。エコ的な暮らし、エコ的な社会を考える上で住まいのあり方が重要になる。
そこで浅井さんは自宅を改修し、都市型のエコハウスを追求することにした。建物を断熱改修し、日射取得や通風を利用するパッシブデザインの手法を取り入れた。およそ3年前のことだ・・・・
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この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・プラスワン7月号/仕様・性能だけじゃない!工務店の標準化 P.60~』(2019年6月30日発行)に掲載しています。
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