新型コロナウイルスの影響によって経済環境が悪化したことにより、あらゆる産業において、効率化や生産性の向上に対する圧力が、急速に強まっている。コロナによる打撃で受注棟数や売り上げのダウンを見込む工務店にとっても、特に住宅建築の「現場」における業務効率化と生産性向上は、アフターコロナへの生き残りに向け、待ったなしの課題だ。そんな中で今、ウッドステーション(千葉市)が全国展開する、これまで現場で行ってきた躯体の施工の一部を工業化(工場生産)する木造大型パネルが、課題解決の一手として工務店から注目を集めている。
省人化と工期短縮を同時実現
大型パネルのメリットは、現場の生産性を向上させると同時に施工精度を確保・安定化できることだ。軸組み、間柱、耐力面材、防水シート、サッシ取り付けまで工場で行うため、現場での大工の作業負担を大きく軽減。住宅であれば通常10 ~14日程度かかる、上棟から一次防水、屋根施工、施錠までの工程を1日で完了させることができるため、工期を大幅に短縮することもできる。
コロナ禍が長期化するなか、今後、職人の確保や現場の管理にどのような影響が出るかは予測しにくい。ウッドステーション社長の塩地博文さんは「コロナ禍において、住宅建築の現場の職人の密集リスクを避ける抜本的な対策は工期を短縮すること」と指摘し、工期短縮には大型パネルを活用した“ファスト建築”が有効だとする。工場生産により、現場に入る大工・職人の人工数を大幅に削減し、同時に工期を大幅に短縮することができる大型パネルが、コロナ禍の今、はからずもこれまで以上に大きな導入効果を発揮する状況になっている。
こうしたなか同社は、大型パネル製造拠点と、設計事務所や工務店など大型パネルのユーザーの拡大を急ぐ。製造拠点については、担い手となるプレカット事業者を正会員とする「大型パネル生産パートナー会」を2019年に設立。将来的には「半径50km圏内」に1カ所を設けて、できるだけ輸送コストを下げながらパネルを安定供給したい考えだ。
一方で、大工や設計者、工務店、広域ビルダーなど幅広いつくり手が参加するユーザー会「みんなの会」(会長=佐藤高志・サトウ工務店社長)を2020年1月に設立。245社・ 284人が参加し、温熱環境や耐久性の研究など、大型パネル普及にとどまらない活動を展開している。
「小さな工務店」の可能性ひらく非住宅分野に進出
大型パネル活用に先行して取り組む工務店の事例からは、“現場のテック化 ”がもたらす、「小さな工務店」のアフターコロナの新たな可能性も見え始めている。
例えば、地域工務店による非住宅分野への進出だ。人口減少などの要因により、将来的に住宅新築市場の縮小が避けられないなか、・・・・
この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン8月号/工務店テック&住宅テック P.10~』(2020年7月30日発行)に掲載しています。
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