住友林業(東京都千代田区)、NTT都市開発(東京都千代田区)、大手ディベロッパーのHines社(ハインズ、米国テキサス)はこのほど、脱炭素社会の実現に向け、ネットゼロカーボンビルの実現をめざす取り組みを開始すると発表した。その足がかりとして、豪州メルボルン近郊で大規模木造オフィスの開発事業に乗り出す。RC・木造混構造の木造オフィスで、12月着工、2023年8月に竣工予定となっている。
ネットゼロカーボンビルとは、建物を省エネや創エネ仕様にし、再生可能エネルギー利用と炭素クレジットによるオフセットも組み合わせ、建築物の使用時に排出されるCO2(オペレーショナル・カーボン)を実質ゼロにするもの。同プロジェクトでは、豪州の環境認証Green Starの最高位6starに加え、豪州基準の「Carbon Neutral Standard for Building」に基づくネットゼロカーボン認定の取得をめざす。
同プロジェクトでは、構造躯体で約4000m3の木材を使用し、CO2ベースで約3000トンの炭素を固定すると試算。固定量を含め、建材の原材料調達から製造、建築、解体までの建築時に排出されるCO2は、全構造がRC造の場合と比較して約4割削減するのと同等の効果があるとしている。世界各地のグリーンビルディング協議会からなるグローバルネットワーク「WGBC」では、2030年までの目標のひとつに40%以上のエンボディード・カーボン削減を掲げており、プロジェクトで炭素固定機能がある木材の有効活用と建物の省エネや創エネ、再エネ利用を組み合わせることで、WGBCの目標を7年前倒して実現できるという。
建設地のコリンウッド地区は、メルボルン中心部から東に2.5kmで交通の利便性が高く、大きな緑地公園に近接しており、レストランやカフェバーなどの商業施設が充実した職住近接が提供可能なエリア。木造オフィスには、木材や植物など自然由来の素材を取り入れ、ストレス低減や生産性向上に効果があるとされるバイオフィリックデザインを採用。梁や柱を木の現しで仕上げることで、木の雰囲気やぬくもりを体感できる。屋外テラスや、徒歩や自転車通勤者のためのロッカールーム・シャワールームなどの設備も充実させ、良質な職場環境を提供する。社員間の連携を強化したい新興企業や、環境価値の高い物件への入居を指向する大手企業や政府機関などのニーズを想定している。
同プロジェクトは、住友林業100%子会社のSumitomo Forestry Australia Pty Ltd.と、NTT都市開発100%子会社のNTT UD Australia Pty Limited.、Hines社子会社のHines Australia Pty Ltdを通じて実施する。地下2階、地上15階で、1~5階がRC造、6~15階が木造。開発床面積は2万8865m2、専有部面積は1万8399m2(うちオフィスは1万7818m2)。木造オフィスでは豪州メルボルンにおいて最高層となる見込み。
世界各国でオフィスビルを開発・保有するNTT都市開発と、中大規模木造建築事業拡大を加速する住友林業は、メルボルンでの宅地開発事業や米国テキサス州ダラスでの賃貸住宅の共同開発、日本のウエリスコート辻堂東海岸など、共同事業を通じ国内外で強固な関係を構築している。今回、北米を中心に複数の木造オフィス開発実績を有するHines社とともに、各社の知見を融合し、環境負荷が低い次世代型オフィスを開発するとしている。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。