今回は東京都内に建つ木造住宅のリフォーム事例を紹介する。
60代と50代の夫婦が妻の母親と同居するために行った大規模リフォームの一環として、耐震改修や断熱改修を組み込んでいる。
断熱改修の効果と評価を中心にレポートする。
Aさん夫妻は60代と50代。都内のマンションに夫婦2人で暮らしてきた。マンションは駅から近く、生活インフラも整っていた。鍵1つ閉めれば戸締まりが済む簡便さもあって、2人はマンション暮らしを気に入っていた。
そんな2人が戸建て住宅を大規模リフォームし、移り住むことになった。妻の母親と同居するためだ。母親はマンションから徒歩圏内にある木造戸建て住宅に1人で暮らしていた。健康状態は良好だが、先のことを考えると同居が望ましい。
問題は同居する住まいのあり方だ。既存の家を建て替えか、大規模リフォームをするか。既存の建物は築40年。新耐震以前の建物であり、劣化の可能性も考えると、耐震性能は明らかに不足している。屋根や外壁もある程度傷んでいる。そして冬の寒さだ。既存の建物は無断熱に近く、冬場に2人が泊まると寒さで体調を崩すこともあった。
これらを解消した上で間取りの改変や設備の入れ替えなどを行うとなると、大規模なリフォームとなる。工事費もかなりかかる。一般的には建て替えに気持ちが傾きやすい。だがAさん夫妻はリフォームを選択した。母親が既存の建物に愛着をもっていたことと、夫が過去の仕事を通じて高断熱高気密に関する基本的な知識を得ており、リフォームで断熱性能などを新築並みに向上できることを知っていたためだ。
問題は施工者をいかに探すかだ。「インターネットで断熱改修をうたう会社はそれなりにヒットするが、本当に技術力があるかどうかは分からない」と夫は話す。
そんなとき夫は住まいるサポート(神奈川県横浜市)代表取締役の高橋彰さんと出会う。同社は高断熱高気密住宅を建てたいと考える建て主に情報提供と工務店紹介などを行っている。施工者とのネットワークをもつ高橋さんとの出会いは渡りに船だった。2人にとって一気にリフォームは現実性の高い選択肢となった。
施工会社の選別方法
昨年の7月、高橋さんはリフォーム会社を2社紹介した。2人は2社と同時にプランの打ち合わせを始めた。2社は対照的だった。1社は若い担当者で、2人の要望を全てプランに落とし込もうと注力していた。もう1社の担当者は経験豊富で、2人の要望のうち床暖房など有効と思えないものについては「断熱気密性能を高めれば不要です」と率直に伝え、提案から省いて提案をまとめた依頼先の選定の決め手は、断熱気密と壁内結露に関する見識だった。夫は計画換気を機能させるため、気密性能を重視していた。その理由は砂だ。通りを挟んで向かい側は学校で、強風時には校庭の砂が飛んでくる。砂を室内に入れないためには気密性能の高い窓に変え、閉じて生活する必要がある。その状態でも空気を清浄に保つには計画換気が大事になる。
2社が提案した断熱気密工法は異なっていた。若い担当者のところはグラスウールと防湿気密シートを推していた。だが夫は防湿気密シートの施工に不安を持っていた。「リフォームで精度よく防湿気密シートを張るのは相当に難しい。それが問題なくできるのか疑問を持っていた」と夫は振り返る。
この疑問を解消するために、夫は担当者に何度か質問をしたが、最終的な回答は「気密性能より断熱性能を重視した方が暖かい家になる。こだわるべきはC値よりもUA値」だった。夫はこの答えに納得しなかった。そこでもう1社にも同じ質問をぶつけた。すると「気密性能を確実に得るために気密性能が確保しやすい現場発泡ウレタンを採用する。その上でC値1.0cm2/m2を目標とし、気密測定を実施する」と回答があった・・・・
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この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・プラスワン1&2月号/大型パネルは業界を変えるのか P.44~』(2020年1月30日発行)に掲載しています。
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