外壁材の耐久性について実務者の声を聞き、材料別の総合的な評価について、現場の声を紹介する。今回は木造住宅において最大シェアを誇る窯業系サイディングを取り上げる。
窯業系サイディングは木造住宅において最もポピュラーな外壁材であり、現在では7割程度のシェアを占めると言われる。昭和30年代後半まで木造住宅の外壁の大半がモルタル塗りだったが、40年代前半に窯業系サイディングの製造が開始されると、様相は一変。乾式工法による短工期と防火性、表層のデザインの多様性などが評価され、平成4年には外壁材におけるシェアが50%を超えた。
窯業系サイディングはもともと石綿セメント板、石綿スレート板、木片セメント板などからつくられており、材質ごとにJISも分かれていた。石綿(アスベスト)が使えなくなったことなどから窯業系サイディングの原材料は少しずつ変わっていき、材質による分類が難しくなった。そこで平成7年からJISA5422として1つにまとめられている。
窯業系サイディングの材質は詳しくは公開されていないが、現在の製品は「セメント質材料+繊維質原料+混和材+(水)」とされる。繊維は木繊維やガラスなどの無機系繊維、樹脂系繊維などが用いられる。これらは曲げや引っ張り強度を高めるために混入する。
混和剤にはパーライトやゼオライト、バーミキュライト、炭酸カルシウムなどが用いられる。これらは主に軽量化のために混入する。初期の窯業系サイディングは無塗装品が多く、現場で塗装していた。現在は意匠表現が多様化していることもあり、工場で塗装された製品がほとんどだ。天候に左右されない安定した環境のもと、塗布量や乾燥温度などを順守して施工できるので、塗膜性能を確保しやすい。
窯業系サイディングに施されている塗装は主に3つ。1つは比較的安価な普及品に採用されているアクリルシリコン塗料、中級品以上ではフッ素樹脂塗料が中心だ。アクリルシリコン塗料の耐用年数(塗り替え時期)は10年、フッ素樹脂塗料は15年程度と言われる。
なお、最近では最上級品に無機系塗料が用いられるようになった。無機系塗料はポリシロキサン系塗料とも呼ばれるもので、Si(シリカ)を多く含むポリシロキサンと合成樹脂のハイブリッド塗料だ。超高性能をうたうものが多く、フッ素樹脂などの耐候性が高い樹脂と重合させている。
無機系塗料の耐候性にメーカーは自信を持っているようで、変色・褪色に対して30年保証を付けている製品もある。とはいえ、あくまで変色・褪色に対する保証で、耐候性は対象ではない。建て主に説明する際には注意したい。
直張り工法の問題点
窯業系サイディングは工法も変わってきている。かつては直張り工法と呼ばれる躯体に直接釘で留める工法が主流だった。この工法は新築では見かけないが、築古物件のリフォームの現場ではよく見かける。また外壁の張り替えなどでも採用されている。
かつての直張り用の窯業系サイディングは厚みが12mmと薄く、材質によっては釘やビス留め周辺などでクラックを生じることもあった。また、直張り工法は躯体の挙動の影響を受けやすい。たとえば軸組に未乾燥材を使っている場合、柱や梁の乾燥収縮の影響でサイディングが引っ張られて釘が抜ける、シーリングを支点に反る、お互いから引っ張られて割れるなどの事例が見られる。
直張り工法は窯業系サイディングと透湿防水シートの間に空間(通気層)がないため、内外温度差による結露が発生しやすいのも弱点だ。結露水が窯業系サイディング裏面と防水紙の間で逃げ場がなくなり、サイディングの裏面に浸み込み、それがサイディング表面の塗装にまで影響を及ぼし、後述する凍害を引き起こしたり、膨れや剥がれを引き起こすこともあった。
ちなみに健全なサイディングの含水率は6~15%と言われる。施工後に含水率計でサイディングの表面を測り、含水率20%以上の数値が出ると水分過多になっており、内部結露が疑われる。建物の周辺環境にもよるが、内部結露から膨れや剥がれに進行しやすいのは南と西面だ。日射を受けて窯業系サイディングが蓄熱して蓄えた水分を放散し、それが膨れにつながるためだ。
内部結露が発生している外壁は塗り替えも難しい。仮に塗り替えて美観が回復しても、早期に再び膨れなどが発生する可能性が高いためだ。造膜する塗料で塗り変えると水蒸気の影響を受けて膨れが起こりやすくなるので、つや消しで透湿性の高い塗料のうち、蓄熱しづらい薄い色を塗布するなどの工夫が・・・・
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