整った空間ですっきり暮らすには、効率的な動線と適切な収納が必要だ。だが、機能性だけを追求すると空間的なゆとりが失われる。両者を高いレベルで融合させる設計手法について、Mアトリエ(神奈川県大磯町)の岡村未来子さんを取材した。
多様なスペースを効率的に配置
プランニングに際しては、大らかな間取りで開放感をもたせることを重視している。一方で建物自体はなるべく小さくまとめるように考えている。
子育て世代の場合、LDKと水まわり、寝室、子供部屋に加えてシューズクローク(SCL)、家事室、パントリー、ウォークインクローゼット(WIC)、書斎など多様なスペースが求められるが、延べ床面積30坪あれば、こうした要望を十分に満たせる。さらに洗面脱衣室と家事室を兼ねたり、各収納室の広さを抑えることで延べ床面積24坪で上記の要望を満たすことが可能になる。 すっきり暮らすとは持ち物が表に出てこない生活のこと。それを実現するには一定の収納量が必要だが、多ければよいものではない。大事なのは作業する場所に収納があることだ。一般論としては1人あたり幅1800mm・奥行600mm・高さ2000mm程度の収納量を目安としている。
とはいえ現在の住まいより収納量を減らすことは難しい。一定の断捨離は行うにしても今の暮らしが必要な収納の量のベースになる。建て主の現状の環境や住まい方を把握するとともに、初期のヒアリングでリビング・ダイニングなどの広さを重視しているのか、収納量を重視しているかを見極めることが重要だ。
具体的には、どんな部屋がほしいか、どのくらいの広さがほしいかを念のため確認する。そのなかで「ウォークインクローゼットが〇畳ほしい」と収納スペースに関して具体的な広さの要望を伝えてくる場合、LDKの広さより収納を重視していると分かる。
帰宅時の動線への配慮
すっきり暮らすためには、持ち物の出し入れを効率化し、あちこちに持ち物が置かれないようにすることが大事だ。そのためには効率的な動線と収納スペースの配置が重要になる。
ポイントの 1つが帰宅時の動線だ。子供が帰宅したときにリビングに直行して鞄を置き、上着を脱ぎ放しにするということがよくある。これを避けるには玄関から家に上がるときにWICに上着を仕舞い、洗面で手を洗ってからリビングに入る動線が望ましい。たとえば玄関→ WIC→洗面、玄関→SCL→洗面といった動線である。玄関脇に収納室を設ける場合はダブルアクセスで出入りできるようにして、裏動線に組み込むと使い勝手がよく、省スペースにもなる。WICは夫婦の寝室に組み込むことが多いが、家族共用の収納として集約することで省スペースになる。WICの利用率を高めるには子供部屋やLDKからもアプローチしやすい場所に配置するとよい。
洗濯の動線への配慮
同様に重要なのが洗濯の動線だ。乾いた洗濯物をいったんLDKに取り込む動線だと、取り込んだ洗濯物や畳んだ洗濯物が一定時間LDKのどこかに放置されることになり、雑然とする。
洗濯を効率化して散らからなくするには、・・・・
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この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン/施主の心をつかむ 収納&片付け提案 P.28~』(2021年2月28日発行)に掲載しています。
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