米国の材木価格は5月中旬にピークを迎えて以降、大幅に下落している一方で、その他の建設資材価格が上昇したことにより、建設コストの下落は一定の範囲に収まっている。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅勤務が増え、休日も自宅で過ごす人が多くなったことで、住宅需要やDIY・リフォーム需要が喚起され、材木需要が急増した。アメリカでは昨夏より、材木の需給逼迫を背景とする材木価格の急騰によるウッドショックが取り沙汰されており、今年5月には、シカゴ・マーカンタイル取引所(アメリカ・イリノイ州シカゴ)における材木先物価格が、1000ボードフィートあたり1600米ドル以上にまで高騰した。
材木価格の暴騰は建設コストを引き上げ、住宅供給の逼迫と住宅価格の高騰を招いた。住宅需要の鈍化に伴って材木価格も下落に転じ、9月21日現在で、1000ボードフィートあたり602米ドルにまで落ち込んだ。これで建設コストの問題が解消されるかと思われたが、全米住宅建設業協会(National Association of Home Builders, NAHB)が公表した分析によると、材木以外の建設資材価格の上昇が、材木価格の下落を打ち消す形になっている。
2021年に入ってから大幅な価格上昇が見られた資材は、鉄鋼製品、防水紙・建築板、アスファルト、プラスチック製水道管、肥料原料、単板積層材、熱可塑性樹脂・可塑性材料、金属根太・異形鉄筋、木製の窓・ドア枠、銅のパイプ・チューブの10種類で、いずれも年初来30%超の値上がり。特に鉄鋼製品の価格上昇が顕著で、2020年には11.1%の上昇だったものが、2021年に入ってから現在までに、81.3%も上昇している。
また、鉄鋼製品、防水紙・建築板、プラスチック製水道管、肥料原料、単板積層材、銅のパイプ・チューブ、建設用金属製品、その他の集成材、アルミスクラップの9種類の資材は、この3ヶ月間で特に価格が上がっており、4月から7月の間に20%を超える割合で価格が上昇している。
住宅需要や材木価格、その他建設資材価格の激しい動きに翻弄される建設業界だが、事業者の見通しは必ずしも悪くない。全米住宅建設業協会が9月20日に公表した9月の「NAHB住宅市場指数(NAHB/Wells Fargo Housing Market Index)」は76で、約1年ぶりに80ポイント台を割った前月から1ポイント持ち直している。同指数は全米住宅建設業協会による月例調査に基づいており、今後6ヶ月間の一戸建て住宅の販売見通しに対しての、事業者の認識が反映されている。50以上の数値は、建設業者の景況感が「好調」であることを示している。
材木以外の建設資材価格の上昇という問題は依然残っているものの、材木価格の下落と堅調な住宅需要は、建設業者に一定の安心感を与えるとしている。
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