建具は空間の機能と意匠の双方に関わる。既製品ではなく、木製建具を製作すると設計の自由度が高まる。高断熱高気密住宅から「木の家」マンションリノベーションまでをカバーし、木製建具を標準とする藏家(くらや、大阪市住吉区)のセオリーについて、代表の居藏宏幸氏に取材した。
室内建具は基本的に製作する。シート貼りの建具や建具枠は「木の家」になじまない。また既製品には寸法の制約もある。例えば910mmスパンで120mm角の柱を配置すると柱と柱の間は790mm。既製品の建具だとちょうどいい寸法がなく、中途半端な小壁などが出てしまう。リノベーションだと既存の躯体に合わせる必要があるので、なおさらだ。新築住宅の場合、10本程度製作するので60~70万円になる。既製品の倍以上の価格だがその効果は大きい。
室内建具の基本仕様
基本的に室内建具は引き戸で戸袋を設けて引き込ませるかアウトセットとする。天井高さを抑えた空間では小壁をつくらずに建具の高さは天井までとすることが多い。最近は床の不陸の影響を受けづらい上吊り戸とすることが増えた。背の高いフラッシュ戸は反る可能性があるので、事前にそのことを建て主に伝えておきたい。反った場合はダンボールを噛ませることで、ある程度は反りを調整できる。
建具をフラッシュとする場合、シナ合板かラワン合板で仕上げる。どちらも無塗装で済ませる場合とクリア塗装を施す場合がある。塗装する場合はクリア仕上げが多い。シナの場合はオイルで色合いが違う。「クラフトオイる(エシャ)」(大橋塗料)は最初の仕上がりは良いがだんだん黄色っぽくなる。「ユーロオイルクリヤー」(大阪塗料)は、濡れ色になるだけで色合いは変わらないので、最近はこちらを採用している。ただしラワン合板の場合は「エシャ」を塗ることもある。もともと赤系なので、黄味が付加されても赤茶色に転ぶため雰囲気は悪くない。
大手はベイツガか赤身の広葉樹としている。大手の代わりに引手となる溝を彫った堅木を付ける場合もある。溝の幅は・・・・
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この記事は定期購読者限定の記事です。続きは、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン/空間の質を高める造作家具・建具 P.66~』(2021年1月30日発行)に掲載しています。
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