韓国では2012年ごろから不動産価格が上昇し続けており、2021年現在も価格は安定していない。
韓国不動産院の公開している「全国住宅価格動向調査(2021年7月15日)」によると、全国の住宅平均価格は2012年と比較して5.36%上昇。首都圏は、6.49%も上昇している。直近半年は、毎月0.5%以上の上昇率を記録するなど、国民への影響も懸念される推移だ。
韓国統計庁の調査によると、韓国の人口は5200万人とされており、うち19%にあたる960万人が、東京23区とほぼ同サイズの首都ソウルに住んでいる。ソウル市民の多くは賃貸住宅の契約者で、契約の更新時には契約年数分の「チョンセ制度」の支払いをする必要がある。不動産価格高騰に伴う賃料の値上げが横行しており、賃貸更新料が払えずに退去する住民も後をたたない状況だ。このような状況に対する韓国政府の施策はどのようになっているのか。
2017年7月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は、当初より「所得主導成長」、「公正経済」、「革新成長」を経済政策の柱として推し進めた。特に不動産対策は重点的におこなわれてきた。しかし20回以上発表された不動産対策は功を奏することなく、文在寅政権は今年1月、不動産政策の失敗を公に認める事態へと発展した。
韓国における不動産価格の高騰は、かねてより住宅の供給不足が原因とされている。しかし文在寅政権のおこなった不動産対策の多くは「投資抑制」に力点を置いていたため、住宅の建築許可、着工数は減少。その影響を受け竣工数も減少したことから、住宅不足は解消されないまま価格の高騰が続いている。
住宅供給に関連するいくつかの対策を発表しているものの、計画性に乏しく実効性が低いことも指摘されてきた。この一連の不動産対策の失敗が、さらなる不動産価格高騰を起こしている。
韓国政府が昨年8月に発表した「8・4不動産対策」では、泰陵(テルン)ゴルフ場(1万世帯)や龍山(ヨンサン)キャンプ場(3100世帯)、ソウル西部免許試験場(3500世帯)、上岩(サンアム)DMC用地(2000世帯)などの候補地を住宅として供給すると決定した。
しかし地域住民や地方自治体の反発が強く、供給は難航すると予想されている。今年2月には「2・4不動産対策」を発表。当対策ではソウルを中心とした都心部に約33万世帯分の住宅を供給するとしていたが、現時点での進捗はかんばしくない。候補地の選定や地域住民の同意を得る過程のまま計画は進んでおらず、着工時期も不透明のままだ。
8月4日、韓国の国土交通部(日本における国土交通省)の発表によると、2021年6月末時点での累計住宅許認可実績は韓国全域で23万761件、昨年同期比で22.2%の増加を示すも、過去5年間の平均値と比較すると許可実績はマイナス8.1%となっている。
一方、累計住宅着工実績は全国で26万9289件となっており、昨年同期比で23.5%の増加。過去5年平均比でも15.4%の伸び率を記録していた。竣工実績は全国で累計17万7906件となっており、昨年同期比では24.3%の減少を記録。過去5年の平均比でもマイナス31.1%の実績となっていた。
同発表では直近の建築許可数や着工数は伸びているものの、過去5年間の建築許可実績からみると、韓国の不動産価格高騰を落ち着かせるほどのインパクトは数字からは読み取れない。韓国の不動産価格が落ち着きを見せるのは、少なくとも数年先であることが予想されている。
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