昨夏より、アメリカにおける材木の価格は上昇を続けてきた。新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務が増え、新設住宅需要やリフォーム需要が爆発的に増大したことが主な原因だ。コロナ禍の初期、需要の低下を見越した木材生産業者が生産の規模を縮小していたことも、材木価格高騰の一因となったと見られている。
「ウッドショック」により、5月にはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引される材木先物の価格は最高値を記録したが、最高値をつけて以降は価格の下落が続き、一時は最高値の三分の一以下まで落ち込んだ。
最高値を記録した5月7日の材木先物取引価格の終値は、1000ボードフィート(約2.36立方メートル)あたり1670.50米ドルで、前年5月比で4倍以上の価格まで高騰していた。しかし、6月半ばには1000米ドルを切り、7月16日はここ半年で最低の536.40米ドルまで下落した。2ヶ月強で約68%も下落した計算だ。
価格は7月20日より上昇に転じ、7月29日の終値は600台の621.90米ドルまで回復したが、最高値の37.2%ほどに留まっている。
材木先物価格暴落の理由としては、ウッドショックで住宅の建設コストが増大し、新規の住宅需要が鈍化・停滞したことや、「バブル」の破裂を危惧した投資家・投機家が資金を引き上げたこと、また、コロナ禍によって冷え込んでいた景気が回復の兆しを見せ、資金が他用途に流れたことなどが挙げられる。
ただ、アメリカ合衆国商務省(U.S. Department of Commerce)が発表しているアメリカの住宅着工件数は、5月は157.2万件と市場の予想(163万件)を下回ったものの、6月は164.3万件と市場の予想(159万件)を上回っているため、陰りはあるものの、依然として新設住宅への需要は高い。
そもそも、シカゴ・マーカンタイル取引所における材木先物の取引価格は、ウッドショック以前は300~400米ドルを推移しており、現在の500~600米ドルは高水準だ。暴騰した価格が反動で暴落したものの、確実に存在する住宅需要に支えられ、ウッドショック以前の水準までは戻らなかった。この直近の値動きを見ても、最高値647.00米ドル(7月11日)、最低値582.00米ドル(7月27日)と、600米ドル前後で比較的安定して推移している。
気になるのは、この暴騰・暴落がもたらす日本への影響だ。日本におけるウッドショックの影響が半年ほど遅れて顕在化したことを考えると、しばらくは材木価格「高騰」の影響を受ける可能性が高い。
林業には長期的な生産計画が必要であり、国産材需要の急激な増加に対してフレキシブルに対応することが難しいため、供給が目に見えて増加していないことも価格が下落に転じないという予想の根拠の一つとなっている。
ウッドショックによるバブルが弾け、アメリカの材木需給が沈静化へ向かっていることで、国内の生産業者は一層増産に慎重な姿勢を見せると考えられる。アメリカにおける材木価格「暴落」の日本への影響は数ヶ月後に表れると見られているが、その時の材木先物取引価格の動向を含めて、先の見通しが難しい状況がしばらくは続く。
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