住宅1棟の庭は、隣り合う住宅とのつながりを生かせば、より豊かな景観が生まれ、その景観が美しく心地よいものであれば、それは1棟1棟に住む人たち相互の暮らしの豊かさを高め合うことになる。コロナ禍において、庭をはじめ自然豊かな住環境に注目が集まっている。良質な環境やコミュニティーを創出するための分譲プロジェクトなどのプロデュース経験が豊富なチームネット(東京都世田谷区)代表の甲斐徹郎さんに、暮らしの豊かさにつながる心地よい庭や美しい景観を生み出すためのポイントを聞いた。
暮らしを家の中だけで完結させず、庭をはじめ家の外まで拡張することで初めて、暮らしの豊かさが生まれてくる。この暮らしの豊かさをより大きくするために、建物の周辺環境が生み出す価値に着目し、コーポラティブハウスや戸建て住宅の分譲といったプロジェクトをサポートしてきた。その時に大切にしているのが、①気候のつながりをつくる ②景観のつながりをつくる ③利用のつながりをつくる―の3点。
気候のつながりとは、基本的には「風をデザインする」ということ。従来の住宅の間取りは、採光を重視するため南面の開口部だけが大きく設けられる。これに対し提案したいのは、2方向に掃き出し窓を設け、その間を風が抜ける「通風の軸線」を通すこと。北面に水まわりを集中させて塞いでしまうような間取りはしない。
さらに2方向の開口部の先には植栽を施す。南側の緑は太陽の直射日光を遮り、北側のまとまった緑は冷気を生み出すクールスポットとして機能する。この冷気を室内に効果的に取り入れるために、地窓を設けたり、垂直方向に風が抜けるように風抜け窓やトップライトを設けることもある。こうして室内間取りと周囲の「微気候」を整えることで、室内だけでなく、街の環境と連係した風の道をつくる。風をデザインすることで快適な環境が生み出される。
奥行きと広がりを意識
気候のつながりのために2方向に植栽された緑は、同時に豊かな景観をつくる。隣り合う庭や緑をつなげることで、お互いに豊かな景観を味わうようにデザインする。庭の緑に隣の家の緑が重なり、奥行きのある景観が楽しめる。さらに遠くの山並みまでが自分の庭とつながって広がりのある景観となる。
利用のつながりは、・・・・・
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続きは、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン/工務店がつくる心地いい庭 遊べる庭』(2020年10月30日発行)に掲載しています。
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