矢野経済研究所(東京都中野区)はこのほど、UIJターン転職支援サービス市場、空き家バンク市場、多拠点居住サービス市場の3分野を対象に実施した国内の移住支援サービスの調査結果を発表した。それによると、2020年度の移住支援サービス市場(事業者売上高ベース)は、前年度比20.6%減の93億3600万円となる見込み。これは、市場規模の大部分を占めるUIJターン転職支援サービス市場が、新型コロナ感染拡大による採用縮小の影響を受けたことで市場全体が縮小したもので、コロナ禍による大きな環境変化で地方移住への世間一般の関心や需要自体は高まっている。
テレワークが浸透し、都市部の企業に在籍したまま地方への移住を検討しやすい環境となっていることから、全国版空き家バンクのサイト利用者が大きく伸長。毎月のサイトPV(ページビュー)数が前年比1.5~2倍、UU(ユニークユーザー)数が2倍になったサービスが見受けられるなど、地方移住への関心が高まっている。各種支援サービスは「地方創生事業」として利益よりも地域活性化や地方創生を重視しているものもあり、官民によるさまざまな取り組みとコロナ禍による大きな環境変化が、移住支援サービスの需要拡大を後押ししているとみられる。
2021年度は、前年度比15.4%増の107億7000万円と予測。UIJターン転職支援サービス市場は、徐々に回復をみせている求人市場全体の採用意欲に合わせ、今後市場も回復していく見込み。
空き家バンク市場は、東京圏の「密」を避けるための地方移住やリモートワークの浸透による働き方の変化など、住まい方を考え直す機会が増えたことで、地方の不動産情報などに対する関心が高まっており、市場も堅調に推移すると予測する。
多拠点居住サービス市場は、コロナ禍で人の移動が少なくなったことやテレワークが進んだことでサービス利用が一時的に低下したものの、ホテル・不動産等の宿泊施設のサービス参入や、テレワーク場所としての多拠点居住への関心の高まりから、2020年度後半から市場は回復傾向。今後もこの傾向が続く見通しとなっている。
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