ベンチャー企業のティエムファクトリ(東京都港区)は、2012年の創業時から京都大学と共同で、エアロゲルという断熱性能の高い素材でつくる窓用の透明な断熱材として「SUFA(Super Functional Air、スーファ)」の研究開発を進めている。
同社によれば、エアロゲルは熱伝導率0.012W/mKでグラスウールの約3倍の断熱性能。昨年5月には6.7億円の資金調達を実施し、茨城県内に研究開発拠点を構えた。同社社長の山地正洋さんは「2023年度には製品化を目指す。“透明窓断熱市場”を創造していきたい」と抱負を語る。
製品化を目指す
断熱性の高いスーファは、従来の断熱材に比べ3分の1の厚さのものをガラスで挟むだけでトリプルガ ラス以上の性能を発揮できる。いずれも透明の板型の「MONOLITH TYPE」と粒子状に細かくした「POWDER TYPE」の性能の差がない2種類の商品を展開する。国土交通省が4月に開いた第2回「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」で日本建材・住宅設備産業協会、板硝子協会などが連名で提出した資料によると、一般的なグラスウールの熱伝導率0.032~0.052W/mK、ロックウールの同0.034~0.047W/mKに対し、スーファの同0.012W/mK はインパクトが大きい。
山地さんは「当社が調べたところ、 断熱性能は世界最高レベル。スーファは透明で軽量であることから、これまで不可能だった窓ガラスに断熱材を入れることを可能にし、家づくりの概念を大きく覆す。国内だけでなく世界中の窓に搭載されれば1兆円規模の市場が見込める」と話す。スーファの価格は「トリプルガラスの窓の市場価格と同等クラス」を目指しているという。
独自製法で実用化に成功
スーファは多孔性で、素材の骨格が均一に空間を仕切っているため、内部では熱運動量交換が起こりにくい構造だという。1990年代にはNASA(アメリカ航空宇宙局)が実用化している。ただ、その後、一般的な市場では普及していない。海外でエアロゲルメーカーは設立されているが、性能が劣っていたり、大判化に着手できていない現状がある。山地さんは実用化が進まない理由として「コストと技術の問題」 と指摘し、「これまでエアロゲルをつくるのには高価な『超臨界乾燥装置』が必要で、10㎝角をつくるのに4000万円以上かかるなど非現実的なコストがネックとなり世界的にも市場が広がっていない」と説明する。
同社は京都大学との共同研究により、コストがかかる超臨界ではない独自の製法を開発。透明度が高い大判のエアロゲルをつくることができるようになった。スーファは、耐熱温度が450℃、圧縮弾性率が 0.72MPaで、紫外線などによる経年劣化がない。重さは1㎤当たり0.11gと軽量だ。
現状の設備環境で、最大 300×300×10㎜のブロック型の製品をつくることができる。・・・・
続きは、『新建ハウジング紙面 2021年7月10日号 9面』に掲載しています。
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