政府はこのほど、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針2021)を閣議決定した。
菅内閣発足以降、2050年カーボンニュートラルの宣言、デジタル庁の創設など、日本が進めるべき改革の大きな方向性を示してきた。こうした改革の政策を具体化して、ポストコロナの持続的な成長につなげる投資を加速するため、「グリーン化」「デジタル化」など重点的に投資を促進していくことを示した。
「グリーン化」については日本が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2030年度の温室効果ガス排出削減目標を2013年度比46%減という新たな目標としたことから、「脱炭素を軸として成長に資する政策を推進する」「再生可能エネルギーの主力電源化を徹底する」「公的部門の先導により必要な財源を確保しながら脱炭素実現を徹底する」という3つの考えの下で推進する。
民間投資、イノベーションを喚起するために「地球温暖化対策計画」や「エネルギー基本計画」を見直す。産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につなげるために、あらゆる政策を総動員し、洋上風力、水素、蓄電池など重点分野の研究開発、設備投資を進めていく。さらにグリーンイノベーション基金による野心的なイノベーションに挑戦する企業への10年間の継続支援、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の活用等、企業の脱炭素化投資を後押しするとともに、新技術の導入に資する規制改革や国際標準化に取り組む。
脱炭素に向けた政策としては再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、最大限の導入を促す。電力部門以外でも省エネルギーを徹底し、未利用熱等も活用するとともに、供給側の脱炭素化を踏まえた電化を中心に進め、水素などの脱炭素燃料やカーボンリサイクルも活用する。
住宅・建築物については、規制的措置を含む省エネルギー対策を強化し、ZEHなどの取組みを推進するとともに、森林吸収源の対策強化を記した。
カーボンプライシングを活用していくことも明記された。クレジット取引については、企業ニーズの高まりを踏まえ、非化石証書やJクレジットに係る既存制度を見直し、自主的かつ市場ベースでのカーボンプライシングを促進する。その上で炭素税や排出量取引については、プライシングと財源効果両面で投資の促進につながり、成長に資する制度設計ができるか議論を進めていくとした。
「活力ある地方創り」の項では政令指定都市、中核市等を中心にスマートシティを強力に推進することを挙げ、住民満足度の向上、グリーン化など多様で持続可能なスマートシティを2025年度までに100地域構築する。具体的には、スマートシティの整備を加速させるためスーパーシティを起点に、スマートシティ重点整備地域を選定し、都市間・分野間連携の基盤となる都市OSの早期整備によって、多核連携の実現を後押ししていく。
また、3D都市モデル等のデジタル技術やデータの利活用を行い、ユニバーサルデザインの街づくり、利用者負担の枠組みも活用した鉄道等のバリアフリー化、モーダルコネクト強化、自転車利用環境の充実を含む移動環境の整備等とスマートシティが融合し、多様な働き方・暮らし方を促進し、QOLの向上を目指す。
原動力の基盤を作っていくためにグリーン・デジタルをはじめとする戦略的国際連携強化を挙げた。今年4月の日米首脳会談で立ち上げられた「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」に基づき「グリーン成長・気候変動」の分野で連携、取り組みを強化。気候サミットで各国が示した排出削減目標の引上げや気候変動対策の強化等の国際的な動向を踏まえ、国内の2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みとともに、日本が誇る技術を最大限活用した世界の脱炭素移行への支援等を通じ、COP26などで脱炭素化のリーダーシップをとる。
SDGsについては、日本が官民連携して国際ルールづくりを主導し、関連投資・事業を強化する。特に、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現・具体化をはじめ、環境・気候変動・エネルギー、水循環等の分野で関連する取り組みや投資を強化し、世界をリードしていく。
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