アンドパッドはこのほど、建築・建設業に特化した電子受発注システム「ANDPAD受発注」を発売した。受発注にまつわるすべての作業をデジタル化することで、現場監督や経理の業務負担を大幅に削減しながら、適法性もクリアしているのが特徴だ。開発責任者の山口隆志さん(プロダクト本部本部長)と、法務責任者の岡本杏莉さん(上級執行役員 法務部長兼アライアンス推進部長)に話を聞いた。
なぜ、業界に特化した受発注システムが必要だったのか。開発責任者であるアンドパッドの山口さんはこう話す。「建築・建設業界では、発注者と受注者の間で電話やFAX、紙の帳票類を織り交ぜたやりとりが1明細につき 数十回も発生しており、作業量の多さと作業負荷の大きさは他業種と比べても圧倒的。現場の生の声を聞くなかで、単に受発注を効率化するだけでなく、同時に法令対応の課題・不安を解消する仕組みも求められていると感じ、それが開発の出発点になりました」。
開発期間は半年。協力企業による試運用を経て、今年5月に正式リリースした。
見積もりから請求まで
ANDPAD受発注は、[見積もり→発注→受注→納品→検収→請求]までの一連の受発注業務をデジタル上で完結できるもの。電子契約に必要な電子署名やタイムスタンプの機能を備えており、発注者である工務店と受注者である協力業者・職人・建材店とのやりとりは基本的に[受領⇄回答][発注⇄請負]などのボタン1つで済む。
これまで受発注にかけていた多くの工程が半分以下になり、作業負荷を大幅に軽減。例えば、月末に集中していた請求書の仕分け・ファイリング作業も不要になる。
電子化のメリットは他にもある。各作業のステータスが見える化されるため、送り忘れや確認漏れを防いで、やりとりのスピードが上がる。パソコンのほかスマホでの確認・編集が可能なため、時間・場所に縛られずに作業が進められる。全帳票類をクラウド上で管理するため、保管のための物理的な場所・コストの節約とペーパーレス化を同時に叶え、過去の帳票も手間なく呼び出すことができる。
また、業界特有の商慣習にフィットする独自機能として、出来高払いの設定も可能にした。
正式リリース前の先行導入事例では、請求書の仕分けや突合わせの確認作業が不要になったことで、これまでに月末の残業時間が大幅に削減されたといった成果が報告され、「もう従来のやり方には戻れない」との声が挙がっているという。
適法性は確認済み
もう1つこだわったのが、法令対応と使いやすさの両立だ。ANDPAD受発注は、建設業法および電子帳簿保存法に対応。「グレーゾーン解消制度※」を活用し、同システムを使って行う工事請負契約が建設業法施行規則で求められる「技術的基準」を満たすことを経済産業省を通じて国土交通省に確認、適法性が認められた。
これにより工務店は、ANDPAD受発注を適切に使うだけで、見積もり・発注・請負契約・請求などの業務を法令順守のもと電子化し、法的に有効な契約や帳簿管理が可能に。請求書の原本保存や発注請負書の印紙といった手間・コストからも解放される。
最後に、法務責任者の岡本さんがこんな話をしてくれた。「まだまだ多くの方にとって電子受発注や電子契約は、難しそう、ハードルが高そうなイメージしかないかもしれません。けれども、秋野卓生弁護士いわく、業務の電子化はもはや『新しい文化』だと。今回の受発注も、法令対応だけでなくユーザビリティにもかなり工夫を凝らしているので、日頃使っている施工管理アプリの延長で気軽に使ってもらえたらと思います」。
『ショックをチャンスに変える 新時代の工務店経営会議』
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