再エネを含めた省エネ効果を盛り込んだ影響はいかに!?
この2018年案の試算に問題はないか、前提条件を細かく見ていくと、太陽光発電の自家消費分を含める対策の、致命的な欠点が※印の注意書きの中に見つかった。
「※ ZEH 基準以上については再生可能エネルギーの導入に係る効果を含んだものとなっているが、エネルギー削減量を算定する際に、地球温暖化対策計画において別途再生可能エネルギーの導入による省エネ分と見込んでいるエネルギー量(原油換算5.94 万キロリットル)を減じている」
原油換算で5.94万キロリットル分が、再エネとダブルカウントとなるために除外されている。この「5.94万キロリットル」を発電量に置き換えると、
原油換算5.94万キロリットル=一次エネルギー換算2.3PJ=電力換算2.36億kWh
となる。
2030年のZEH戸数313万戸(戸建て227万戸、共同住宅86万戸)とすると、1戸当たり約75kWhを差し引いている計算だ。
ZEHの一般的な太陽光発電出力を、戸建5kWh・共同住宅2kWhとすると、自家消費量は戸建(自家消費分約30%として試算)1800kWh、共同住宅(同40%で試算)960kWh。合計の自家消費量は、電力換算で46.8億kWhとなる。
そこから、ダブルカウントとして除外される2.36億kWh(原油換算5.94万キロリットル)を引くと44.4億kWh(原油換算114.5万キロリットル相当)のダブルカウントがまだ残っている計算となる。
455.6万キロリットルから114.5万キロリットルを引くと338万キロリットル。目標値である356.7万キロリットルを15.6万キロリットル下回り、目標未達である。2020年の省エネ基準適合義務化の見送りの根拠自体が間違っていた可能性は高く、省庁間の連携不足による「縦割り行政の弊害ここに極まる」といった状況だ。
このように、現行の住宅・建築物の温暖化対策は、深刻な問題を抱えていたが、現在作成中の2030年NDC46%用の温暖化対策案には、省庁間でしっかりと連携された、バックキャスティング手法による良案となる事を期待したい。
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