義務化政策と誘導政策のCO2削減効果はいかに?
続いて、住宅の省エネ基準適合の推進政策における「1、最低基準としての省エネ基準義務化による底上げ政策」「2、高断熱、高効率設備による省エネ基準超えへの誘導政策」の2つの政策の、省エネ量への寄与度をグラフ化してみた。
省エネ基準の適合義務化の寄与度が73%と圧倒的に大きく、ZEH相当への誘導政策の寄与度が27%。新築住宅は最低でも省エネ基準レベルにする必要があり、適合義務化も早期に行うべき、というのが、当時の最重要項目であったと言える。
新築住宅の省エネ基準適合の推進を具体的に可視化してみる(2018年義務化見送り編)
2018年、国土交通省は、既定路線だった住宅の省エネ基準適合義務化を無期限で見送った。
その時のバックデータであり「2016年の温暖化対策における削減目標は義務化せずとも達成可能」という根拠の資料を、ここで紐解いてみよう。
外皮性能について、16年は「省エネ基準超(BEI=0.8)」1つだけだった高性能のカテゴリーが、誘導基準・トップランナー基準・ZEH基準以上の3つに増えている。各グレードの一次エネルギー消費量は以下の通り。
また、太陽光発電の自家消費分も含めた計算法に変わった(再エネの自家消費は省エネの文脈になるので、変更自体は歓迎すべき内容だ)。
2018年の案に基づいてCO2排出量の削減量を計算してみると、2030年の削減量は一次エネルギーで176.6PJ(原油換算455.6万キロリットル=CO2削減量1193万t)。2010年比で0.8%削減と、16年案から後退している。
また、18年案でも「1、最低基準としての省エネ基準義務化による底上げ政策」と「2、高断熱、高効率設備による省エネ基準超えへの誘導政策」の2つの政策の寄与度をグラフ化してみた。
16年案とは逆に、適合義務化の寄与度は28%と低く、誘導政策の寄与度が72%まで上昇した。しかも、戸建てはZEH以上への誘導政策が、全体の約半分を占めるに至った。
再エネの効果がとても大きいことがわかったため、省エネ基準の適合義務化よりも、再エネの自家消費による省エネ効果を加味して、ZEH比率を高める方向に、政策が抜本的に転換したのである。
これにより、住宅の省エネ基準適合義務化見送りという、前代未聞の事態が発生してしまったことは間違いないと思われる。
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