2020年に実施されるはずだった住宅への省エネ基準適合義務化が、ようやく決定しそうな見通しが立った。
そもそも、なぜ義務化が見送られたのか。最近になってその根拠となる資料が公開され始めたが、その内容を疑問視する見方も強い。
このほど、日本エネルギーパス協会代表理事の今泉太爾さんが、公開資料を基に、これまでの住宅政策が真に脱炭素につながるものであったか、詳細に検証した記事を、インターネット上で公開した(元記事はこちら)。
この度、今泉さんから許可をいただき、記事の一部を編集したうえで紹介する。
脱炭素社会に向け、住宅産業の構造が変わろうとしている。その起点は「第5回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(以下「再エネTF」)。東京大学大学院の前真之准教授が、2050年カーボンニュートラルを実現するため、住宅のさらなる高性能化を提言した。
この議論を受け、住生活基本計画に2050年カーボンニュートラルに向けた記述が盛り込まれたり、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」での議論が始まった。
前記の再エネTFで、住宅政策を大きく変化させるきっかけをつくった前准教授が、ご自身の研究室のWEBページで、住宅の省エネ化に関する住宅を整理しまとめたレポートを公開している(「住宅の省エネ政策 根拠検証」)。
この内容を分析することで、これからの住宅政策によって「2050年カーボンニュートラル、そして2030年NDC46%は実現できるのか」を深彫りしてみたい。
NDC26%は実現可能だったか?
パリ協定を踏まえた地球温暖化対策として、日本が掲げたCO2削減目標は、2050年に80%削減、および2030年26%減(2013年比)だった。
そのうち、住宅関連では「新築住宅における省エネ性能の向上」により、原油換算で356.7万キロリットルの削減(社会全体の約7%)が目標。このカテゴリーでは、
1、最低基準としての省エネ基準義務化による底上げ政策
2、高断熱、高効率設備による省エネ基準超えへの誘導政策
の、2つの対策が主に想定されていた。
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