脱炭素で持続可能な社会をつくっていくことを目指すNPO法人「気候ネットワーク」(理事長:弁護士、浅岡美恵)は6月7日、11~13日にイギリス・南西部コーンウォールで開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)において、日本政府が唯一石炭火力発電所への支援を継続していることにより、孤立を深め、環境団体からの猛烈な圧力に直面しているというプレスリリースを発表した。
同日、日本政府や企業に新規の石炭火力発電事業からの撤退と再生可能エネルギーを支援するよう求めている35の環境グループが提携した組織「No Coal Japan」と日本やオーストラリア、ヨーロッパ、韓国、米国のそれぞれにおいて2030年の脱石炭を目指すキャンペーン「Beyond Coal」が協力して、イギリスのフィナンシャルタイムズ紙(アジア版)に世界第3位の経済大国である日本に対し、石炭から脱却し、再生可能エネルギーへの投資を行うように呼びかける全面広告を掲載。日本に対して強い訴えかけを見せた。
実際、日本はG7の事前協議で国外への石炭支援を終わらせようとする各国の合意を度々妨げ、2030年までに国内の石炭を全廃することへの同意することを拒んできたこともあった。プレスリリースの中では「抜け穴のある石炭政策を維持しようとする日本の主張は、最終的なG7合意を台無しにしかねない危険性を有している」と強く主張している。
また、気候ネットワークの国際ディレクターの平田仁子氏は「日本は、G7諸国の中で唯一、いまだに国内で石炭火力発電所を建設し、国外の石炭火力に資金提供している国だ」と現状を訴えた。
プレスリリースでは「日本が、2050年までにネットゼロを達成すると表明したにもかかわらず、現在でも6ギガワット相当の新規石炭火力発電所の建設を進めている」と指摘。
また、日本が国外の石炭火力発電所への資金提供を続け、バングラデシュのマタバリ2石炭火力発電所とインドネシアのインドラマユ石炭火力発電所の建設に向けたODA支援を積極的に検討していることを挙げ、このプレスリリースと市民社会グループが、2つの計画に対する支援検討を即中止し、国外の化石燃料ファイナンスを終了させるように求める共同声明を発出したという。
日本の石炭火力発電をめぐる動きに関しては、世界でも否定的な意見が相次いでいる。
国際エネルギー機関 (IEA)は「豊かな国々はより早急に化石燃料のフェーズアウトを進め、発展途上国における公平な移行のための資金調達を支援する必要がある」と示しているのにも関わらず、日本の経済産業省の国際問題担当副局長は、日本政府は、石油、ガス、および石炭への投資を直ちに止めるつもりはないとした上で、IEAのシナリオは「日本政府の方針とは一致しない」と断言した。
ヨーロッパの「Beyond Coal」のキャンペーンディレクターであるカトリン・グッドマンは、「ヨーロッパやアメリカで既に見られるように、先進国では2030年までに石炭火力発電の段階的廃止(フェーズアウト)を完全に実現することに向けて動いている。日本も2030年のフェーズアウトを約束すれば、国際コミュニティにおける多くの気候変動問題を解決し、それに加えて日本が費やしている多くの時間とお金を無駄にせずにすむようになる」と述べる。
さらに「G7サミットは、菅義偉首相が他のG7諸国と肩を並べ、OECDにおける石炭の終焉を加速させるための機会とすべき」と述べた。
オーストラリアの「Beyond Coal」に参加するグリーンピース・オーストラリア・パシフィックの最高経営責任者(CEO)であるディビッド・リッターは、「日本で燃焼されている石炭の大部分はオーストラリアから輸入されている。そして石炭は、気候変動の最大の要因」と実情を説明した上で、「日本と世界中の人々は、2019から2020年に発生した山火事でオーストラリア各地が焼野原となり、人々や命が失われ、野生生物が壊滅的な被害を被ったことを恐怖とともに見ていたはずだ。このような気候変動を引き起こす最大の原因は、石炭の燃焼。人々と自然、野生生物をさらなる気候変動の影響から守るために、日本はオーストラリアの石炭への依存を断ち切り、2030年までに石炭から再生可能エネルギーの利用にシフトすることを約束すべき」と実例を示しながら訴えた。
気候ネットワークの平田氏は、「今年、菅首相は、2030年までに温室効果ガス排出量を46%削減、さらに50%の高みに向けて挑戦するという積極的な動きを表明した。この移行は、雇用を創出し、国内の投資を促し、気候変動に関する国際社会における日本の評価を改善することにつながる。石炭への海外支援中止と国内石炭の全廃に踏み出さなければ、日本に対する信頼性は大きく損なわれる」と危機感を示している。
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