太陽光義務化は「2025年」?
三浦:雑な質問で恐縮ですが、諸富先生ご自身は、義務化の期限として、日本全体でいつを目指すべきだとお考えですか。
諸富:スピード感から言えば、2025年に義務化しないと間に合わないのではないでしょうか。2030年に46%削減ですから、30年に義務化では目標の期限と同じ。それまでは義務化されないわけですから。
私も初めて知ったのですが、国交省の感覚では、既に9割が基準を満たしているような状態になって初めて、義務化の環境が整うと考えているというのですね。そもそも義務化の考え方が違うのですね。竹内先生がおっしゃるように、義務化が普及促進の推進力になるはずです。工法も標準化されるし、大量発注によってコストダウンが図られるのもまた事実だと思うのですが、国交省にとっての義務化のタイミングは、9割まで普及した時点となる。だから先に、誘導策になるのだそうです。
わからなくもないのですが、期限を設定せずに誘導するのではなくて「〇年に義務化する。遡って、今はこういう誘導・支援策で推進していくんだ」という方向に揃うと、全く状況は変わると思いますね。
三浦:ありがとうございます。諸富先生から、2025年をひとつの期限として義務化する、と、具体的な数字が出ました。
前:まったくもってその通りだと思います。
エネルギー基本計画から、太陽光をどれだけ住宅に載せないといけないかを考えれば、一刻も早く義務化が必要。だけれど、準備期間を考えればギリギリ。2030年はあり得ないから、2025年とする。もちろんさまざまな課題があるでしょうけど、それは解決できる。
今の日本では、課題があるからやらない、で済まされてしまう。太陽光・再エネを中心とした社会は、みんなにとっていい社会になるはずなので、そこに向けて課題を、みんなの知恵で解決していかなくてはいけません。今は、やらないためにできない理由を集めている。国交省の義務化の話ではありませんが、9割だがやっていれば、適合義務化しなくてもいいのは当然。義務化はコスパが悪くなるだけで、他のことをやれという話になるわけですよね。結局、何かしら定量的な目標を設定する話がないまま政策を小出しにして、仕事している気になっている。
本当なら、2025年では間に合わないけど、それでも2025年の義務化から、逆算してやっていく。ただ、さっきも申し上げたように、実は2011年ごろから省エネ基準の適合義務化っていうのはロードマップに書かれていたんですよ。準備期間が8~9年もあったのに、いまさら断熱等級4ができないという話をしている人たちなので、2025年になれば、またああだこうだと言っているんでしょう。
もはや、目標をロックしないとダメですよね。再延期は絶対にできない、絶対にあらゆる問題を潰す覚悟でやらないと厳しい。これは、再エネタスクフォースの人たちの本領ですね。
諸富先生にお伺いしたいことが、あと2つあります。容量市場について、再エネタスクフォースの方々も大変苦労をされている。雑誌などを読んでいると、再エネタスクフォースは良い書き方をされていないのですが、なぜでしょうか。
それから、今泉さんが太陽光を説明する動画をYouTubeで公開しているのですが、必ず太陽光にはアンチがいる。あれはどうしてなのでしょうか。
三浦:なるほど。前先生の疑問も皆さんにお聞きしたいですが、その前に、野池さんから太陽光のお話を伺いましょう。
野池:(義務化は)もう2025年でしょう。総量はどのくらいか、とか、1戸単位で何kWにするか、とか、具体的な議論はあるでしょうが、2025年には何らかの義務化をしなくてはいけないと思う。
僕の役割は、義務化されたからいやいややるのではなく、みんなで、前向きに“太陽光を載せた家を作ろう”というムードをつくること。いやいややる世界はとても気持ち悪いから、そうならないよう、僕も含めてみんなで頑張りたい、と強く思っています。
質問なんですけども、前先生に出していただいた国交省の資料に、26%目標のときに、住宅・建築物の省エネの見込みがありましたね。46%になったとき、住宅がどれくらい省エネするかの数字は、検討会でもう出ているんですか。
小山:まだ出ていません。
野池:それがないと、さっきも出ていたけれど、バックキャスティングにはならないですよね。
前:NDC26%の時は、全く開示されていなかったですからね。
今泉さんがホームページで強く追及されていましたけど、今回、タスクフォースが強く要請して、やっと一部が情報公開された。そうしたら、こんなとんでもないZEH目標を隠していた、ということが明らかになったのが、一連の流れですから。
放っておいたら、社会資本整備審査会に回されて断熱や太陽光発電のことに詳しくない先生方に判断が任されて、密室で問題ありませんっていう結論にいくのは目に見えているわけですよね。
野池:前先生の最大の貢献は、このデータを国交省に開示させたことですよ。
前:再エネタスクフォースの委員の人のご尽力の賜物ですよね。(河野太郎・行政改革担当)大臣に、情報開示しろと言っていただいて、やっとこれが出てきたんですよね。
野池:やっとデータが出てきたんだから、削減目標が46%になった今、この数字を出さないで議論を進めることは、まさかあり得ないと思うんだけど。
竹内:このデータが、46%になったらどうなるのか試算することは、とても大事な話だと思いますよ。
野池:僕は、検討会を全部見ていないので申し訳ないですけど、検討会でそこをしっかりみんなで言っていかないと、バックキャスティングにはならない。
竹内:それに、私がこの資料を話題にしているだけで、検討会の場には出ていないんですよ。だから、次の提案資料にはこれを盛り込んで、どういう風に改善されるのか、と質問をちゃんと投げかけます。
野池:ぜひお願いします。このままだと、フォワードキャスティングでできることだけやろう、という国交省の話だけが通って、他のところがごまかされてしまうでしょう。絵に描いた餅で、何となく日本全体で46%削減しよう、というのはとても気分が悪い話。
結局は「何をしていたんだ、46%削減できなかったじゃないか」となって、またごまかされる。みんなでごまかすようなことは二度とやりたくない、というかやるべきではない。竹内先生には、ぜひ強いご意見を言っていただきたい。
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