基準はG2でいいのか
三浦:なるほど。同じ質問を野池さんにもお答えいただきたいと思います。
野池:技術的な面から言えば、G2は義務化してもいい……というかやるべきです。太陽光(の義務化)と比べれば、ハードルは低いとも思います。僕の周りも、ほとんどG2レベルの家づくりになっていますから、無理なくできるんじゃないかな。
もちろん、そのレベルに到達していない、意識の低い会社がどこまでできるかはわからない。だけど、少なくとも熱心に、ちゃんと勉強をしていい家をつくりたいと考えている人に対して、G2義務化やでと言ったら「それはいいことだ」と思うはずですよ。
むしろ、僕は太陽光が気になりますーそちらに話題を持って行かない方がいいのかもしれないけど。先ほど諸富先生もおっしゃったが、準備期間も必要として、2030年に義務化では46%目標には間に合わない。すると、切りの良い2025年に義務化かなと思うが、あと4年でその準備ができるのか。どこかに痛みはあるだろうが、国民全員が太陽光の義務化を、ある程度は気持ちよく受け入れるムードが、4年でつくれるでしょうか。頑張って間に合わせてほしい。
そこが、今度はG2の話につながる。太陽光発電をどれだけ設置するかによって、暖冷房でどれだけのエネルギーが使えるかという話になるんですよね。G2を義務化するなら、全館空調なのか間欠空調なのか、どれくらいまで全館空調に近づけるか。おそらく、そんな議論になっていくのではないでしょうか。
今は間欠・部分空調と、連続・全館空調が全くの別物として扱われているのが気になる。今の省エネ基準の想定だと、暖房する時間帯がとても少ないでしょう。就寝時は暖房しない想定。居室、人がいる部屋なのに暖房しない時間帯があることがとてもおかしい。就寝時も室温18℃を保てるよう、間欠・部分空調でもいいから暖房しよう。そこから、どこまで全館空調に近づけるのか。逆に言うと、全館空調からどれだけ減らしていけるか。より良い部分・間欠空調を議論しないといけないのではないかと思います。
この場合、居室、非居室の室温をどれくらいに保つかを明確にしなくてはいけない。根拠は健康になるでしょうが、暖房のスケジュールを考えていく。全館空調はわかりやすいけど、部分空調がものすごくぼんやりとしている。本当は複数のパターンがあるはずなのに、部分空調とひとまとめに言っちゃうのは、ちょっと乱暴な議論かなと感じますね。
最後に、前先生が提言された「誘導」は、やっぱりやりたいと思う。熱心な人たちと、誘導水準の家づくりを広め、エネルギー消費を減らしていくことを、個人的にも応援、サポートしていくのが、僕の役割としても大事かな、と。大きな期待をしています。
三浦:野池さんから、いい問題提起がありました。全館空調はとてもわかりやすいけれど、間欠空調をどう捉えるのか。それから、室温の問題提起もありました。この辺の議論がなされていないことに対し、抵抗を示している方もいらっしゃいますね。
今泉さんは、野池さんの問題提起をどう捉えたでしょうか。室温などを今の基準みたいなところにどう落とし込んでいくのか。なにかいいアイディアはありそうでしょうか。
今泉:結局、住まい方は人それぞれじゃないですか。諸外国に倣えば、室温の最低基準の室温を決めてしまうんです。ドイツは19℃が基準です。持家なら23℃でも15℃でも好きにしていいのですが、賃貸などでは守らなくてはいけません。規格を考える際の統一見解としては、人権的にも19℃以上でなくてはダメだ、とラインを引いてあるのです。
日本なら、よく出てくる18℃が適当かな。18℃を保てるような暖房計画の住宅を基準として、あとは好きにできる、フリーにするのがいいのではないかと思うのですが。
三浦:ありがとうございます。18℃という温度のものさしもひとつ、ここで出てきました。
わかりやすいものさしとしては、既にG2が挙がっています。前先生、例えば室温とG2の2つのものさしは、どんな風に整合していくのでしょうか。
前:たくさん批判があるのは承知しています。そもそもUA値だけの議論でいいのか、熱負荷、電気代、どれも必要で大事なことは本当によくわかるし、HEAT20が適当なのかという話も理解できる。
私は単に、最も認知されている数字を使っているだけに過ぎない。UA値以外にも指標があるのはわかるけど、それはプラスアルファの部分でやればいいこと。少なくとも、G2までやればみんな仲間であり、そこから先、違うことをやっても敵じゃない、という状況をつくらないと。本当に戦うべき相手を忘れて、内輪もめをまだまだ続けるのですか。
G2が目指すべき目標だ、という主張ではないことをご理解いただきたい。既にそのレベルをクリアしている方は「我々は、とっくの昔にやっているよ」でいいんですよ。ただ、世の中が、少なくともそこまでいかないと話にならないという意思を表明していただければいい。
その上を目指す際、評価法が1つだけでいいわけがないのは、わかりきった話です。ただ、そこで内輪もめが起こると、せっかくの話がなかったことになってしまう。本当にそれでいいのか。ZEHがせいぜいという結論で検討会が終わってしまったら、これを黙認した我々みんなの責任ですよ。
竹内:私も、G2が世間でよく使われているから、断熱性の高い家をどういう風に建てるかの話で使っているだけ。型式認定のハウスメーカーもある中で、1戸1戸やるとなればまたわけのわからないことになってしまうから、G2の躯体性能は、ひとつのものさしとしては有用だと思いますよ。最も大事なのは、省エネ基準のレベルではいけないということです。
連続空調と間欠空調の話も、シミュレーション結果をわかりやすく示すためにやっているものです。当然、中間の議論もあるだろうし、もっと後で議論することかもしれないけど、太陽光の議論の前に、バイオマスも忘れないでほしいと思う。何度「バイオマスはカーボンニュートラルだ」と言っても、スルーされてしまうので「おいおい」と思うんですね。
とにかく、多様性はあって良いんです。伝統工法を守りたい人から「どうするんだよ」とよく言われるのですが、さっき今泉さんがおっしゃったように、伝統工法の家に住みたい人は、住んでもらって構わないんです。「寒くてもいい」と言うから、それでいい。エネルギーをたくさん使うなら、カーボンプライシングで社会的責任を果たせばよい。異なる形で参加できる前提に立たないと、するかしないかの議論になってしまう。そうではなく、何%(CO2を)削減しなくてはならないかを理解してもらいつつ、何をするかが大事。
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