先を見据えた「G2プラスアルファ」の提言
前:ただ、我々の知らぬところで、実は国交省はZEHを標準化する目標を立てていたんです。再エネタスクフォースでも指摘しましたが、NDCが26%削減だった時の住宅のエネルギー削減目標は、全く根拠が開示されていませんでした。タスクフォースから何度も問い合わせてもらい、やっと開示された資料を整理してみると、大変面白い。何と、国交省は2030年までに合計300万戸以上―戸建て227万戸・共同住宅86万戸―のZEHをストックする計画を立てていたんです。これが今回、初めて明らかになった。
ということは、もともとZEHを新築でどんどん建てる計画の元で、適合義務化を見送ったのか、と。でも、国交省が所管する工務店は、ZEH化率が1割ですよ。300万戸という数字はどこから来たのか。矛盾した話になっちゃう。
とにかく、国交省はあんな態度でも、実は全てをZEHにするような計画を、NDC26%の時に立てていた。正直びっくりしています。削減目標が46%になったらもっと厳しいぞという話の中で、このかつての計画の話もなかったかのように議論が続いている。
まさに今回のたたき台は、フォワードキャスティングの塊が、今できつつあるという感じ。バックキャスティングのバの字もない。住生活基本計画に盛り込んだ、脱炭素社会実現に向けたバックキャスティングは一体どこに行ってしまったのか、と思わせる議論が続いている。訳が分からないですね。本来、国交省は2030年までに300万戸以上のZEHをストックできるはずだから、適合義務化しなくてもいいと考えていたはず。結局はしなかったのか、それ以上のことは途方もないことなのかなって思っています。
ここからは、視聴者の皆さんへのお話です。竹内先生が繰り返し言われている通り、断熱等級4で連続空調をすると、大きな増エネになるし、G1でも断熱性は不十分。増エネのままです。等級4の間欠空調と同等のエネルギーに抑えるには、G2の性能が必要です。もっと先に行くためにはG2を超える、何かをやらないといけない。G2は必ずやって、G2超を目指しましょう。
これは、市販ソフトを使って計算をした結果です。電気代だけを見ていただきたいのですが、等級4の間欠空調と同じにするには、G2の連続空調をまず実現しないといけない。ここが健康・快適の下限です。もっと減らすためにはG2超を目指さなくてはいけないのですが、義務化はG2とし、誘導基準として「G2プラスアルファ」を提案します。プラスアルファは、いろいろな手段があっていいと思うんですよ。もっと断熱してG3にするのもいいし、太陽熱を利用するのもいい。連続空調でも、間欠空調の等級4と同じエネルギーで済むG2をベースラインにした上で、プラスアルファの部分を、みんなで頑張っていく。
これぐらいでみんなのコンセンサスをとって、竹内先生を応援する必要があります。応援の形にはいろいろと考えがあると思いますが、例えば共同声明を出すとかして「(工務店が)これは当然のようにできる」と表明すべきではないでしょうか。みんなで竹内先生を応援する流れをつくりたいですね。
太陽光は、私もまったくの素人なのですが、誤解や風評被害もある中、どうするのがいいのか。本当に太陽光の話題は避けてはいけない。このまま放っておけば先送りされるだけです。断熱は、住宅の専門家として必要性を訴えていきたいと思いますが、再エネはぜひ諸富先生のお力もお借りしたいと考えています。長くなりましたが、私の提言は以上です。
三浦:前先生、ありがとうございます。
ここで、今泉さんと野池さんにご登場いただきましょう。お二人のご意見を伺ってから、G2の義務化はできるのか、太陽光はどうするのか、問題を提起したいと思います。
まず、今泉さんに、たたき台の感想と、前先生の提言にあったG2の義務化をどう思うか、コメントをいただけますか。
今泉:ちょっと前のデータですが、環境共創イニシアチブが公開している、2018年度ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業報告会の資料を見ると、UA値4.0を下回ると、ほとんどが全館空調になっているんです。それが、断熱性が下がって0.54になると、8割が間欠空調になる。N=3000ぐらいですからそれなりの精度だと思います。
ZEHレベルでUA値0.6ですから、ここで止めると間欠空調が大部分を占めるでしょう。このままならエネルギー削減は進むでしょうが、全館空調がもっと広まれば、エネルギー消費量は約3倍に増える。そうすると全てが破綻するので、クールビズやウォームビズのようなことを、ガチでやらなくちゃいけなくなってしまうんですよね。
日本の政策は、コロナ対策を見てもわかりますが、“お願い”ベースだった。言うことを聞いてくれる人だけで成り立っていましたが、それが崩れつつある。だから「全館空調にしないでくれ、みんなわかるだろう」という政策をつくるのはやめたほうがいいと思っている。
そうなると最低基準は、ZEHでは不十分。UA値0.4前後というと、G2のちょっと上になりますね。義務化はG2として、それを超える性能を誘導基準として初めて、(CO2)削減のフェーズに入るのだと考えています。
三浦:前先生のお話は、今泉さんとしては“のれる”お話でしょうか。
今泉:本当に(エネルギー消費を)減らすには、G2では足りないんですよ。全館空調にする人が増えてしまうから、G2だと現状維持にすぎません。
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