「結局ZEH」で終わるのか?
三浦:太陽光については、後ほど今泉さんや野池さんも交えて再び議論をしたいと思います。
竹内先生と諸富先生にお聞きしますが、検討会はたたき台の後、どうするのでしょうか。何か国交省からお聞きになっていますか。
竹内:特に何も聞いていないです。
諸富:私も、一切聞いていないですね。
三浦:小山社長、何か情報を得ていらっしゃいますか?
小山:いえ、私も知らないです。次回は、とりまとめの案が審議される予定ですね。案は、会議の数日前には委員の方々に届くでしょうから、それを元にして、みんなで知恵を出しあえばいいのではないかと思います。だいたいの内容は想像がつきますが……。
三浦:確かにたたき台からすると想像がつきますね。僕の経験からすると、今後は社会資本整備審議会を経て、政策化されていくことになると思います。
ですが、社会資本整備審議会には、住宅とは無関係の方も参加される。国交省の提案がそのまま通ってしまうのではないか、それが心配です。それではダメなので、この公開取材を通じてどうにかしたいと思っています。前先生も同じ思いをお持ちだと思いますので、ここで前先生からの提言をお願いします。
前:今、三浦さんがおっしゃったように、放っておくとこのたたき台がそのまま、他のところでオーソライズされて「これで行きましょう」となり、何も変わらないままになるのは目に見えているでしょう。
たたき台の元ファイルはとても読みにくいので、4ページのスライドにまとめてみました。冒頭は相変わらずの精神論で、日本人らしい内容です。次は、中長期で目指すべき姿です。一応は、現行の2030年の目標として、新築住宅・建築物の平均でZEH・ZEBの実現が記されている。委員からの意見として「ZEH・ZEBを目指すべき」「省エネでかつ快適に暮らす」という、当たり前の話が書いてある。竹内先生も提案されたのに、非常に定性的な話になっている。ZEHと何が違うんだ、ZEHで十分、という程度の議論で終わっちゃうような内容ですね。
次はボトムアップ策が書いてあります。適合義務化はする、程度の内容ですね。しかし、未だに準備期間が必要だと主張する方が多いうえ、義務化の水準を高い基準にしよう―竹内先生も言われていること―という意見もありますが、「過度な負担」とか「段階的に」という意見もまだ出てくる。
あとは法律の専門家がおっしゃる、制度設計の話ですね。太陽光についても、昨日はいろいろな発言があった。「大きなおせっかい」、パターナリズム的なことになるというご意見もあったりする。
それから誘導措置の話。結局、ボトムアップっていうのは省エネ基準、断熱等性能等級とか、その程度しかない、とありありと感じられますよね。
3枚目は、ボリュームゾーンのレベルアップはどうするのかという話。ZEH・ZEBで行く、という感じが強くしますね。性能の表示はよく出る話ですが、これは問題ないでしょうね。あとは住宅ローン減税を連動させなさい、とか、BELSを義務化する話もある、とか。全体的には、今のZEHレベルの性能で十分だろう、という結論でしょうか。
たたき台を見る限り、省エネ基準(断熱等性能等級4)を慎重に適合義務化し、ZEHを誘導基準にする、としか読み取れない。この上の話は一切書いていないわけですよ。唯一、成果と言えるのが、国交省が、経産省主導のZEHを、渋々認めたぐらいでしょう。「大騒ぎをして結局ZEH止まりか」という話で、全くその上には行かないな、というのが普通の感じ方だと思います。
太陽光発電も、諸富先生のご意見の通りですが、本来は決めておくべき「〇〇年に太陽光を義務化しないといけない」というタイムリミットが全くないまま、定性的な話だけが進みます。一応、義務化をするべきという意見もあるけど、慎重論との両論併記になっています。とにかく義務化して、あれこれ努力しようという話がない。「こういうことをやらないといけない」という話がないまま、好き嫌いの話になってしまった観があります。
「反対意見がこれだけあります」という中では、とても無理だ、ということでしょうか。そもそも省庁の事前ブリーフィングで「太陽光の義務化はありえない」と宣言されたという噂もあります。諸富先生もおっしゃる、もう余地は住宅屋根にしかないことは事実ですが、それが検討されないまま定性的な話に終始する。コスト増の指摘も、本当に根拠はあるのかな……何度否定しても、同じ意見が繰り返し出てくる。全く話が進まなくなっている感じがあります。
先ほど小山さんから、2050年に100GW必要だという話もありましたが、とにかく、大変な勢いであらゆる建物の屋根に載せるしか手段がないぐらい、難しい目標なんですよ、2030年に46%削減は。第6次エネルギー基本計画も決まっていないタイミングの悪さもあるでしょうが、すごいことをする必要があるのに、未だ昔の議論を繰り返している感じですね。
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