工務店の熱意で政策を変えろ
三浦:ここで、視聴者のみなさんに投票していただきましょう。ひとつ目は、省エネ基準適合義務化について。私が考えた選択肢ではありますが、即時義務化するか、基準はG1なのかG2なのか……今のところは「即時G2を義務化」という方が多いですね。「2025年まで準備を行いG2で義務化」競っていますね。
即時―ここでは2022年―G2義務化は、先ほど小山社長のご意見に合った「未習熟工務店」の問題があるとしたら、可能かどうか。長年、高性能化を誘導し、実務者を見てこられた今泉さん、どう思われますか。
今泉:技術的には問題ないでしょう。
どんなにレベルの低い工務店でも確実にできる、というのならG1でしょうね。G1なら明日からやってもいいレベルなのですが、G2となると、少し地域によっては考えないといけないこともある。最も水準の低い人たちを考えるのが義務化ですから、即時ならG1が上限かなと思います。
安全パイなら、即時で現行の省エネ基準を義務化して、いずれG1なりG2なりの、段階的な義務化をセットにすればいい、と個人的には思っています。
三浦:今の話も、投票結果に反映されたようですね。「G1レベルで義務化」が14%、「即時G2義務化」が30%。「2025年まで準備を行ってG2で義務化」が最多と。高性能化に取り組んでいらっしゃる工務店や、建材メーカーのみなさんがお考えのタイム感として、参考にさせていただきました。ありがとうございます。
太陽光に関しても、このままお聞きしていきましょう。たまたまですが「2025年をめどに設置義務化」もあります。議論で2025年が出てしまいましたので、それに引っ張られてしまう部分もあるかもしれませんが……。
「融資の拡充にとどめるべき」「現行のままでいい」との回答もありますし、「できるだけ早い段階で設置を義務化」も35%……。投票が終わりました。結果、2025年が4割、できるだけ早い段階で、というご意見も3割くらいありますね。
これは私の思いですが、メディアとして、何かしらの提言をしたいと思っています。前先生から「G2+α」を提案していただきましたが、新建ハウジングだけではなく、もっと多くの方を巻き込みつつ、これを提言できればと考えています。チャットでもご意見をいただきましたが、団体なども含めいろいろな方々と提言、提案ができるのではないでしょうか。
竹内先生や諸富先生に、検討会で提示していただくのもいいでしょうし、ストレートに、ロビー活動のような仕掛け方もありかもしれません。今日の議論の中で、一応は合意を得られそうな「G2義務化プラスアルファ」に向けて、さまざまな団体やプレイヤーのみなさんと、何か声を挙あげられないでしょうか。
太陽光も、2025年の義務化が適切なのでは、という声をあげ、どんな政策がありえるのかも提言していきたい。そして、エビデンスやデータの開示を求めていく(「NDC46%の目標達成を定量的に示す」)。この3点に関しては意見の一致を見られるかな、と思いました。
最後に、お一人ずつ、この3点をどう感じたか、ご自身は何ができるか、お考えを伺ってまとめとしたいと思います。みなさんが大きな期待をされている竹内先生に、検討会での発信と、その後実現させるにはどうすればいいかも含め、先陣を切っていただきましょう。
竹内:みなさん、今日は本当にありがとうございました。孤軍奮闘だとよく言われますし、自分でも「四面楚歌とはこういうことか」とも感じています。
私自身、所属する団体もありますが、それ以上に最大公約数でどんなことが言えるのかがとても大事だと考えています。次世代に「あの時、あの場にお前はいたのに、いったい何をしていたんだ」って言われないように、ということだけを肝に銘じていますので、ぜひ応援していただきたいし、こういう議論を公の場でできたのも、ありがたいことだと思います。
私一人の話ではなく、こういった集まりのなかで出た話として、検討会に意見を届けることが私の使命です。できるだけやっていきたいと思いますので、応援をよろしくお願いします。
小山:三浦社長がまとめていただいた3点については、私も大賛成です。ひとつだけ「太陽光搭載住宅のみ減税維持」という案については、「ZEHのみ減税維持」もほぼ同義だと思いますので、(表記を)ご検討いただければと思います。
諸富先生には、住宅・建築業界に不足している電力系統などの知見を、ぜひまたご教示いただければありがたいなと思っております。今日は本当にありがとうございます。
野池:僕は基本的に、義務化は最小限にすべきだと思っている立場です。ただ、いろいろなことを考えれば義務化はせざるを得ない。だったら、国はできるだけうまくやってほしいし、僕らもそれを捉えたいと思っています。
いい義務化を実現してほしいと思いますが、義務化は最低のレベルだから、我々はもっと上を目指そうというモチベーションをつくり、具体的な技術を進化させていくのが僕の仕事だと考えています。
また、小山さんから冒頭、「ゲームチェンジしたことを認識していない」というお話がありました。僕もある意味でドキッとしましたが、菅(義偉・総理大臣)さんも、住宅業界のリーダー―僕もその一人かもしれない―も「ゲームチェンジしたんだから、意識を変えよう」と訴えていくことが大事ではないかと。これから日本は変わるんだ、次のステージに進むんだ、って。
今日お集りの方の中には、地域や業界でリーダー的な立場におられる方もいらっしゃるでしょう。ぜひ、周りに「ゲームチェンジしたんだ」と声をかけていただきたいですね。
今泉:細かい話で申し訳ないんですが、先ほど話した説の補足を。
ZEHや太陽光を載せる場合、融資枠を多少増やすことは、普及のためには絶対必要。お金が足りないから載せない、という人は必ずいるんですよ。太陽光発電で得た収益を、収入合算できれば(融資枠は)増やせるんですよ。
賃貸アパートなどは、太陽光を載せれば借入時に収入合算できる。持家の場合、収入合算をしないので、単純に金融的に見てあげるだけでいい。奥さんがパートをしているのと、意味は一緒なので可能なはずなんですよ。脱炭素を実現する、とても真面目な話をしているのなら、技術的にできることはすぐにやったらいいと思います。
また、断熱を2025年に義務化するのはいいのですが、2020年の義務化をすっ飛ばした前例がありますし、5年後にはまた同じようなことが起こりそうな気もします。だから、現状で約9割の住宅が適合している省エネ基準を義務化し、同時に2025年、G2に義務化の水準を引き上げることを、セットで即時に実行するほうが、リスクは低いのでは。前科がある国交省に、5年間も時間をあげて、再度延期になるのはちょっと嫌だな、と思っちゃいますね。
前:色々と先生方ご教授ありがとうございます。
野池さんが言う話も、とってもよくわかって。合理的な計算法と数値を示していけばおのずとみんな行くよねっていうのは、私も建築物省エネ法のWEBプログラムに関わり、自立循環型住宅開発委員会にも参加しているので、すごくよくわかります。
しかし、今が2000年だったらそういう議論をのんびりしていてもいいのかと思うけど、残念ながら今は2021年も中頃っていう問題がひとつ。もう一つは、詳細な計算できる設計者は増えつつあるけどそれでもまだまだマイノリティであるということも事実。正直そこにあと数年でどれだけみんなが計算ができるようになるのか、過剰な期待はするべきなのか。教育だけやればいいとは思えなくなってきていて。多少は義務ではめていくしかないでしょう。政策とはミックスだと思うんです。教育も発展させつつ、無理やりでも多少の義務は必要で、そのベストミックスを探る。
それに、多少無理やりにでもやれば、底上げも期待できます。いいものがマーケットに増えれば、コストも下がる。数値計算だと、今のコスパの良さにばかり話が行ってしまい、技術が発展すればひっくり返るような話が固定されて、局所最適化で話がスタックしている気が、ずっとしていたんです。窓メーカーの努力で、高性能な窓もかなり安く手に入るようになったので、G2も安くできるようになった、と言えるようになりましたが、今のコスパの良さと、将来を見越して引っ張っていくとか、いろいろなレベルの議論が必要なんですよね。
この国は何より、まともな数字に基づく議論ができないし、すぐにけんかになってしまう。僕が高断熱・高気密なんてうっかり言うと、ものすごく怒られるんですよね。「そんな連中と関わるんじゃない」とか。それはどこかの団体、誰かの顔が浮かんでいる。たぶん、個人的な私怨なんですよね。
失礼な言い方ですが、竹内先生に何をしてもらうか、という話は簡単です。ですが、それで終わってしまっては何もならない中で、どう連携していくのかということ。私も拙いながらに、できることはやりたい。竹内先生が四面楚歌の中でも、説得力のある提言ができるように、みんなで応援しないといけません。
細かいことをごちゃごちゃ言うのは、竹内先生の足を引っ張ることになる――それはみんな自覚しないといけないと思っています。
三浦:みなさん、ありがとうございました。最後に諸富先生、今日の総括をお願いします。業界の総意とまでは言いませんが、熱の高まりをお感じいただけたのではないかと思います。
諸富:みなさま、今日はありがとうございました。コメントも全部読ませていただきました。
先ほどの投票で、私の専門に近い太陽光について、即時義務化に投票された方もかなり多いようで、驚いています。それだけ、みなさんは準備を整えているし、そちらに向かうべきだというお気持ちを持ってお仕事に取り組まれている大勢の方々がご参加くださったことで、私も勇気をいただけました。
昨日の会議でも、確かに太陽光を義務化しようという意見は少数派でした。しかし、将来の義務化まで否定してはいない委員がいると考えると、立場は逆転するのじゃないでしょうか。温暖化が進行している事実は否定できないし、菅総理も46%削減すると言い、国際公約にもなりましたから、何らかの形で義務化は避けられない。委員はみんなそれを理解していると思うんですね。
今日、みなさんからご賛同いただいた「太陽光発電の2025年義務化」ですが、問題を先送りにせず、きちんと期限を決めてやるのだということを、私もしっかり発言していきます。
三浦:ありがとうございました。今後、メディアとして、みなさんのご意見をどう汲み取りながら発信していけるか、大げさな言い方ですが、業界として大同できるのか、そして、業界を代表して生活者に発信していけるか、いろいろと企画を考えていきたいと思います。
最後まで、153人の方がご視聴いただきましたし、コメントもたくさんいただきました。私も全部読ませていただきました。引き続き議論は続けていきます。ご登壇いただいたみなさん、ご覧いただいたみなさん、今日はありがとうございました。
※これまでの公開取材の全文掲載はこちらからお読みいただけます。
第1弾【全文掲載】「脱炭素住宅検討会」キーマンに公開取材!
第2弾【全文掲載】「46%削減目標」で住宅はどうなるか
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