太陽光忌避をエビデンスで解決する
三浦:次の一手として、エビデンスを持ちながらゴールを見定めているのか問いただす、エビデンスとなる資料の開示を求めていくことが見えてきました。竹内先生の応援団としても訴えかけていきたいですね。
しかし、エビデンスがないまま議論が進んでいるのは非常に怖い。空気ですよね。そういう空気の中で、太陽光にもネガティブなコメントが付く、というのが前先生の先ほどのお話だったと思います。今泉さんはこの現状を、どうお考えになりますか。
今泉:私の意見でいいですか。太陽光発電は、導入初期の制度設計が悪かったために、たくさんのアンチが湧いて出ているのでしょう。
ある程度はしょうがないんですけど、特に日本の場合は「2ちゃんねる」など、ネット上で匿名であれこれ書くのが好きな人が突出して多いから、あまり気にしなくてもいいと思います。
ただ、そういう意見を持つ人がいるのは事実。私も突っ込んで聞いてみたりするのですが、どうもリスクが高いと思っている人が多いらしい、ということがわかってきた。どんなリスクを感じているのか、聞いてみるとたいていは雨漏りへの不安でした。
ご存じだったら教えていただきたいのですが、実際、太陽光発電を設置したために雨漏りが増加したというエビデンスはない。あったら、瑕疵担保保険の事故事例に出ているはずなんですよ。でも、事故事例を徹底的に見ても載っていないんですよね。瑕疵担保保険法人も、事故リスクの高さを統計で出しているんですけど、そこにも(太陽光は)ないんですよ。私の結論としては「事故率は、一般的な屋根と変わらない」です。
一般的には、太陽光は屋根に穴を開けるイメージがある。一方で、開けた穴からの雨漏りを防ぐための建築的な仕事は、生活者には理解しにくいので「穴をあけたら雨漏りするでしょう」と思われている。情緒的な話でネガティブになっている。
だから、太陽光の事故統計をつくるべきだと思うんですよ。むしろ国交省にやってほしい。可能なら、竹内先生に提案していただきたいですね。もちろん、施工の不備で事故が起こることもあるでしょう。でも施工不良による雨漏りは、築10年以内、むしろ初年度に起こるでしょう。それに、事故が起こっても、基本的には瑕疵担保保険で補修費用が出る。統計上雨漏りのリスクはとても小さいし、保険で担保されていることを、リスクとして捉えているのは、情報不足のせい。公的なエビデンスが必要ですね。
三浦:なるほど、わかりやすいです。「屋根に穴をあけるのはまずい」という空気がまかり通っているが、エビデンスがないから反論できない。瑕疵担保保険の事故事例から(エビデンスを)拾っていくのも、まさにその通りですね。ここも、ぜひ竹内さんにぜひ提言していただきたい。
今、チャットに「屋根貸ビジネスのようなものが普及すればいい」というご意見が寄せられました。前先生も、住宅ローンの枠を拡充して、小さな負担で太陽光を載せられるようにすればいい、というご意見ですが、今泉さん、生活者のモチベーションを高める、負担を減らすための施策としては、どんなイメージをお持ちですか。
今泉:諸富先生の2025年義務化説を前提に考えれば、25年までの4年間で、住宅ローン減税を縮小すればいいと思うんですよ、拡大ではなくて。
そもそも、今は税金を投入して家を建ててもらっているので、税負担が重い。税の負担を軽減するためにも、太陽光発電を載せている人だけに、現状の減税を維持する。多少制度設計は必要でしょうが、これなら税負担は増えないし、載せない人にデメリットが生まれるから、一気に普及するはずです。
あとは、エビデンスがないゆえにリスクを恐れて載せない人には、エビデンスでリスクを潰していく。そうすれば、載せないことの経済的な不合理性の方が大きくなるので、90%以上の人が太陽光を付けてくれるでしょう。
デメリットというよりも、税収不足の問題ですね。今の、無尽蔵にお金をつぎ込む住宅ローン減税はちょっとやりすぎ。いずれ縮小しなくてはいけないなら、このタイミングで脱炭素と絡めてやるのがいい、というのが私の意見です。
三浦:いいですね。ある種の「北風」施策と、載せない理由を潰していくと。諸富先生、今泉さんのご意見はいかがですか。
諸富:とてもよくわかります。義務化しないのであれば、あえて太陽光発電を設置する人に対しては、何らかの報酬があるべきだと思います。
これは本人にとってプラスになるのはもちろん、社会的なプラスにもなりますよね。経済学では「外部経済」と呼ぶのですが、少なくとも初期コストを負担して、温暖化防止に寄与しているのですから、それに対して何らかの手当をするのは当然です。
今泉さんのご意見が面白いのは、普通なら減税とか金利優遇になるのに、逆の方向で考えていることです。やらない人を、ローン減税の対象から外していくという提案は、なるほどと思いました。今度の検討会で、私から提案してみましょうか。
三浦:ぜひご発言いただければ嬉しいです。小山社長はいかがでしょうか。
小山:今泉さんのご提案は大賛成です。太陽光発電搭載住宅のみ減税というよりも……。
今泉:(非搭載住宅の控除額を)100万円、減額しちゃえばいいと思います。
小山:むしろ、今泉さんの案をもっと進めて「ZEHのみ減税を維持」でもいいかもしれない。断熱も担保されますから。
今泉:どんな住宅でも、建てるのは自由ですが、以前にも住宅ローン減税は300万円まで縮小したことがあります。段階的に100万円ずつ減らしていくのは、毎年やっているようなことだと思うんですよね。
小山:そうですね。こことは別に、複数の先生ともコミュニケーションをしているのですが、これ以上財源はないと聞いています。検討会ではさまざまな委員の方から「財政支援を」というお話が出ていますが、今泉さんのご提案なら、財政支援はいらないかもしれません。
今泉:今はめちゃめちゃ(税金が)出ていますから。
小山:縮小するのは、ひとつのいい案かなって思います。
三浦:ありがとうございます。いい感じでまとまった感じがしますね。
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